医学界新聞

寄稿

2017.08.28



【視点】

医療者・市民へ啓発 「世界敗血症デー2017」

剱持 雄二(東海大学医学部付属八王子病院看護部ICU・CCU主任)


 米国と欧州の集中治療医学会が中心となって「重症敗血症患者の死亡率を今後5年間で25%減らそう!」という目標が掲げられ,“Surviving Sepsis Campaign”という活動が2002年に始まりました。

 この活動で敗血症に関する論文を集約してできたのが,Surviving Sepsis Campaign Guideline(SSCG)です。これによりアジアやさまざまな地域の敗血症診療・研究が進み,2017年1月にはSSCG 2016が発表されました。日本では日本人の体質や日本の医療に合わせ「日本版敗血症診療ガイドライン」が発表されています。特徴としては,Early Goal-Directed Therapy(EGDT)の推奨が下がり,Acute Respiratory Distress Syndrome(ARDS)やせん妄については既存のガイドラインと同様の位置付けになりました。そして,人工呼吸管理については「ARDS診療ガイドライン2016」に準じ,鎮痛・鎮静・せん妄管理は「日本版・集中治療室における成人重症患者に対する痛み・不穏・せん妄管理のための臨床ガイドライン」に準じる形となっています。

 私が委員としてかかわる世界敗血症連盟(Global Sepsis Alliance;GSA)は,上述のガイドラインだけでは進まなかった敗血症の概念と予防・早期発見について,世界中の医療者のみならず,一般市民にも広く伝える目的で,2010年に結成されました。GSAでは“STOP sepsis, SAVE lives!”のスローガンとともに2020年までに達成すべき目標を掲げています。①敗血症の罹患率を20%下げる,②敗血症の救命率を10%上げる,③敗血症のリハビリテーションを世界中で普及させる,④医療従事者・一般市民の敗血症の理解と認知度を高める,⑤敗血症の予防と治療について正確に評価する,の5つです。

 この目標に向けてGSAは毎年9月13日を「世界敗血症デー」と定め,世界中で敗血症に関するイベントを開催しています。今年5月には世界保健機関(WHO)が世界敗血症デーを認め,敗血症が世界の解決すべき課題として認定されました。

 日本では日本集中治療医学会のGSA委員会が中心となり,市民向けイベント「敗血症セミナー」を開催しています。今年は9月2日,東医歯大にて「敗血症の呼吸管理2017――最新のエビデンス・理論を現場の実践に活かす」をテーマに行いますので,皆さんの参加をお待ちしています。

 さらに,敗血症情報サイト「敗血症.com」での医療者・一般市民への情報配信や,デジタルサイネージを東海道新幹線ターミナル駅や羽田空港に掲示して啓発活動を進めています。私自身は,身近な地域に対して,市役所・行政・小学校に告知のポスター掲示をしたり,一般市民向けの広報活動を行ったりしています。興味のある方は,私たちの活動にぜひご賛同いただければと思います。


けんもつ・ゆうじ氏
北里大看護専門学校卒。東女医大病院救命救急センターICUを経て,2003年より現職。集中ケア認定看護師。17年より世界敗血症連盟委員として「世界敗血症デー」の普及に取り組んでいる。

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