看護学士教育の質保証に分野別評価を(上泉和子,高田早苗)
インタビュー
2017.08.28
【インタビュー】看護学士教育の質保証に分野別評価を | |
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看護系大学は毎年増加を続け,看護師国家試験合格者に占める学士課程修了者の割合は3割を超えている。量的拡大に伴い,今,教育の質保証がテーマとなっている。日本の高等教育が分野別評価を実施する動向にある中,医学,薬学も第三者評価機関を設立した。日本看護系大学協議会(JANPU)は「日本看護学教育評価機構(仮)」(以下,評価機構)を来年度設置し,2021年度から分野別認証評価を開始する予定だ。本紙では,JANPU代表理事の上泉氏と,評価機構設立準備委員会委員長の高田氏の2人に,看護学士教育の現状と課題,今後の質保証の取り組みについて聞いた。
――増加を続ける看護系大学の現状についてお話しください。
上泉 1992年の「看護師等の人材確保の促進に関する法律」の施行等をきっかけに右肩上がりで増え,2017年4月時点で255大学,定員2万2481人に達しています(図)。これは,20年以上にわたり毎年10校を超える看護系大学が新設され続けてきたことを意味します。こうした状況の中,教育の質保証は重要なテーマとして社会から関心が寄せられています。
図 看護系大学数及び入学定員の推移(文科省資料より,文科相指定大学のみ)(クリックで拡大) |
――大学と学生数が増え続けることで浮き彫りになった課題はありますか。
上泉 実習施設の確保困難や,教員・実習指導者の不足です。超高齢社会の進展に伴い,医療の状況がこの20~30年の間に激変したことで医療機関も様変わりし,かつてのように学生の教育にまで手が回らなくなっています。実習指導を担う助手・助教ら教員が不足し,多重業務で負担も増しています。大学の急増でひずみが生じていることは確かで,教員の充足を含め質を向上させることは看護学教育の大きな課題です。
分野別評価で強みと弱みを再認識
――JANPUは看護学士教育の「量と質の共栄」を掲げています。大学数,定員数の量的拡大が続く現状をどのように考えていますか。
上泉 量的な拡大は,看護界がこれまでずっと望んできたことです。看護基礎教育の質を学士教育から高めることにつながると考え,前向きにとらえています。
――大きなテーマである,質の保証にはどう取り組んでいくのでしょう。
上泉 JANPUは,①分野別質保証を担う看護学教育評価の制度化,②コアコンピテンシーを基盤とした教育カリキュラムの策定と普及,③看護系大学における教育課程の自主的構築を可能にする制度改革の3つを戦略として掲げ,段階的に質保証を推進する考えです。
――分野別評価による質保証については,2016年7月に評価機構設立準備委員会が発足しています。設立準備委員長を務める高田先生から,設立の経緯をお聞かせください。
高田 2004年に義務化された機関別評価では,点検・評価の対象が教育研究全般や組織・運営面中心のため,各学問分野の取り組みが見えにくい面がありました。それに対し学位プログラム中心の考え方への移行やグローバル化の流れから,日本の高等教育全体の動向として2008年頃から分野別評価が着目されてきました。
実は,分野別評価に対するJANPUの取り組みは比較的早く,2002年には海外の情報収集,評価基準の検討を始めています。その後2007~11年には,評価基準・評価体制等の検討を経て,文科省委託事業として計8大学の試行評価まで行いました。2013年には文科省の第2期教育基本振興計画が閣議決定され,大学における分野別質保証の構築・充実に向けた取り組みの推進が示されています。薬学が2008年に,医学も2015年に相次いで評価機関を設置し,看護も正式実施に踏み切ることになったわけです。
――評価を受ける意義は何ですか。
高田 自分たちの取り組みを第三者の目で再確認できることです。過去に試行評価をした大学からは,自己点検・評価に取り組むことで強みや弱み,改善策が明確になったとの報告がありました。総合大学の一学部・学科では,看護学分野への理解が得られにくい面があったものの,分野別評...
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