医学界新聞

2017.06.12



第52回日本理学療法学術大会開催


 第52回日本理学療法学術大会(大会長=福島県立医大・伊橋光二氏)が5月12~14日,「理学療法士の学術活動推進」をテーマに,幕張メッセ,他(千葉市)にて開催された。伊橋大会長は基調講演の中で,「臨床現場で働く理学療法士一人ひとりが臨床研究の担い手であるとの自覚を高め,理学療法の学術水準向上への契機としてほしい」と本大会への思いを述べた。本紙では,シンポジウム「臨床で学術活動をどのように推進・実践するか」(座長=国際医療福祉大・久保晃氏,慈恵医大病院・中山恭秀氏)の模様を報告する。

伊橋光二大会長

日々の臨床の中で学術活動の実践を

 シンポジウムでは,急性期・回復期・在宅リハビリテーション(以下,リハ)での学術活動の実践例が紹介された。初めに,久保田雅史氏(福井大病院)が急性期病院での学術活動の難しさについて,①在院日数の短縮化に伴い理学療法介入期間が確保できない,②病態の急速な変化が生じやすく,介入の効果を検証しにくい,③発症早期では患者や家族から研究への理解が得にくい,④臨床業務に追われる中で研究時間の確保が困難の4点を挙げた。これらの克服には,転院先施設との連携や外来受診時のフォローアップ,医師との連携,スタッフ間の協力がポイントだと指摘した。同院リハビリテーション部では,研究経験の豊富なベテランと若手がチームを組み,若手が研究手法を実践的に学ぶ環境を整備することで,年1報のペースで国際誌への論文投稿を実現しているという。

 続いて,回復期リハ病院における臨床研究の実践例を生野公貴氏(西大和リハビリテーション病院)が紹介。臨床家一人ひとりの学術活動に対するモチベーションの向上には,研究方法の実践的なサポートが重要だとの見解を示した。同院で月1回実施しているリサーチミーティングは,臨床現場で出た問題意識を共有し,研究仮説の設定や仮説検証のための研究デザインを考える場となっているという。こうした機会を活用しつつ,日々の臨床から研究的視点を持つべきだと強調した。

 「生活を科学する」という視点が重要だと述べたのは,在宅リハ事業を手掛ける阿部勉氏(リハビリ推進センター株式会社代表取締役)。「その人らしい生活を支援すること」を在宅リハの最も重要な使命と位置付けた上で,地域全体のリハ職が連携して学術活動を推進していくべきだと訴えた。昨年組織された「板橋区地域リハビリテーションネットワーク」では,38施設650人のリハ職が参加し,情報交換や研修を行っているという。

 地域包括ケアシステムで求められる他施設間の連携強化は,長期間・多数のデータを集められるという点で,臨床での学術活動推進にもつながる可能性がある。総合討論で座長らは,各医療機関の情報共有の在り方についての議論や評価指標の統一を進めるべきと呼び掛けた。また,本シンポジウムをきっかけに,「学術活動を特別なものととらえるのではなく,日々の臨床と一体のものとして取り組んでほしい」との期待を寄せた。

写真 シンポジウムの模様

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