医学界新聞

2017.05.15



小児科医の多様な働き方を議論

第120回日本小児科学会学術集会開催


 第120回日本小児科学会学術集会(会頭=慶大・高橋孝雄氏)が4月14~16日,「小児科医を育て,子どもたちを育む」をテーマに,グランドプリンスホテル新高輪(東京都港区),他にて開催された。医師の価値観の多様化により,小児科医も人材確保や人材育成の方法に変化が求められている。本紙では,小児科医の人材育成について施設ごとの特色が紹介されたシンポジウム「小児科医としての働き方の多様性に向けて何が必要か?」(座長=さいわいこどもクリニック・宮田章子氏,大阪府立母子保健総合医療センター・位田忍氏)の模様を報告する。

高橋孝雄会頭
 初めに登壇した久留米大小児科医局長の永光信一郎氏は,人材確保には専攻医(後期研修医)の確保と女性医師の就労環境整備の二つを重視しているという。それには,働き方に対する多様な価値観を理解した支援策が必要と指摘した。特に結婚・出産で就労環境が変わる女性医師に対しては,サブスペシャリティの取得を促すことや研究職の道に導くことが本人のやる気を生み,就労の継続につながると考察。「男性医師の理解を得ながら,組織内の課題共有と対策見直しを進める姿勢が重要」と訴えた。

 「小児科医は総合医である」。こう述べた位田氏は,総合力を有する小児科医育成に向けた研修内容を紹介した。小児科医には急性期だけでなく,慢性期への対応,さらには保健,福祉,教育機関といった院外との連携が求められる。同院では小児科と成人診療科共同の移行期医療体制を整備し,その中をローテートすることで総合力のある小児科医育成をめざしていると報告した。

 中林洋介氏(群馬大病院)は,厚労省医系技官としての2年間の出向経験とその意義を紹介。行政官として,公衆衛生学的観点から健康・医療について考える俯瞰的視点が養われたと振り返った。臨床現場に戻った現在は,医療と地域行政との連携や学会活動にも注力し,小児科医としての活躍の幅を広げていると語った。

 開業医の立場から若手小児科医の育成や働き方のサポートについて述べたのは宮田氏。同院の特徴はグループ診療と病診連携を実施している点にある。グループ診療により,常勤・非常勤・時短勤務など多様な働き方を提供できているという。また,小児科医育成に地域診療医が貢献できる分野として,同学会の定める「小児科医の到達目標」にある「小児保健」,「成長・発達」,「地域総合小児医療」の3分野を列挙した。病診連携により,初期研修医・専攻医をクリニックに「迎える研修」,診療医が基幹病院で講義や症例相談を行う「出向く教育」を実施。両者を通じ,地域・在宅医療への理解を深めてもらいたいと呼び掛けた。

 大学病院には,一人でも多くの小児科医を育成し,地域の医療体制を整える役割がある。信州大の中沢洋三氏は,産後の女性医師への支援が重要との見解を示し,実際に出産を経験した同大の4人の女性小児科医に対して行った支援内容を報告した。例えば,日中の診療が中心となる領域への出産直後の一時的な転身や,研修医の指導担当への配置など,面談を行いながら各人の希望や個性に合わせた働き方を提案したという。その結果,多様な働き方を実現し,就労継続につながっていると振り返った。

 総合討論では,女性医師の働き方に関して,「状況によっては妊娠中でも当直をせざるを得ない」という現状があることや,むしろ当直を経験することで小児科医としてのその後のスキルの維持向上につながるといった意見がフロアから寄せられた。

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