第15回姿勢と歩行研究会開催
2017.04.17
第15回姿勢と歩行研究会開催
講演する奈良勲氏 |
本紙では,奈良勲氏(金城大大学院)による特別講演「リハビリテーションにおける姿勢と歩行の概念――移動は動物を含む宇宙・地球・社会の命の源」の模様を報告する。
歩行は,体幹と脊柱の回旋,上肢の交互運動を基軸とした下肢の振り出しによって成り立つ
歩行能力とADLや社会参加の相関は極めて高く,幼児期から高齢者までのライフスパンを通じて,関連領域で対処すべき重要な課題と言える。理学療法士として中枢神経疾患を中心に数多くの患者を診てきた奈良氏は,姿勢制御には三大要素である前庭・体性感覚・視覚だけでなく,中枢神経系,関節を含む筋機能,姿勢配列,欠損,痛みなどの要素が関与することを指摘。「骨格,臓器,器官などを個別に診る医学モデルと生活モデルの片方に偏らず,総体的システムとして診る・観ることが大切」だと述べた。
氏は自身がかかわってきた研究を通して,重心移動の学習効果の持続性は認められないこと,足関節戦略においては後方への重心移動が極めて不利であること,緊張性頸反射では頸の伸展において下肢の抗重力の働きが抑制されること,外力が大きくなると各関節戦略による姿勢制御には限界があること,片麻痺患者においては四肢の非対称性の機能不全を呈するが,頸部・体幹・骨盤ではその限りではないことなどを示し,歩行以前に基本肢位の姿勢保持・制御の改善を図ることの重要性を確認した。さらに,足底冷却が姿勢調節や支持基底面の広さに及ぼす影響,厚底靴が重心動揺と下肢筋活動に及ぼす影響の研究から,足指や履物への留意を呼び掛けた。氏はこれらの知見を組み合わせ,虚弱・機能低下高齢者のための機器を使用しない運動プログラムの開発にも携わっている。さらに,金城大が実施した幼児・児童の足の調査において見られた浮き足や内側アーチの未形成を紹介。足や指の変形は下肢あるいは身体全体へ波及するため,きちんと足に合った靴を履き,子どものうちから足の健全な発育を促す対応策が重要だと述べた。また,氏らが2010年に発足させた日本動物理学療法研究会において経験した,寝たきりの子象への理学療法事例を紹介し,人間だけでなく動物においても神経筋促通法(PNF)や徒手療法により可動域改善が可能であることを紹介した。
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