医学界新聞

寄稿

2017.02.13



【寄稿】

学生ならではの視点で作り,広げる
「抗菌薬啓発キャラバン」スタート!

高橋 揚子(東北大学医学部医学科6年/Smile Future JAPAN 代表)


 薬剤耐性菌増加の大きな原因として,抗菌薬の不適切な使用が挙げられます。2016年4月発表の「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」では国民全体への啓発・教育活動の重要性が強調され,同年,政府によって毎年11月が「薬剤耐性(AMR)対策推進月間」に設定されました。アクションプランの中では,小児やその保護者を対象にした啓発活動が重要になると指摘されています。

 そこで本稿では,子どもたちの健康にかかわる学生団体の立ち上げから,昨年の推進月間期間中に医学生が中心となって開催した,抗菌薬の正しい使い方を学ぶ親子向けワークショップなどの活動を報告します。

学生ならではの強みを生かし健康に資する活動をしたい

 私は,小児診療のための医学生・研修医ネット「こどもどこ」の代表として2年間,勉強会やワークショップを開催してきました。その中で,「何かが欠けている」と感じ始めていたときに,文科省の「官民協働海外留学支援制度――トビタテ! 留学JAPAN 日本代表プログラム」(2016年度第4期)に参加し,社会を変えようと奔走する多くの他学部の学生に出会いました。社会から手厚いサポートを受けている医学生である私が,“学ぶ”というインプットばかりでよいのか。「学生でも」「学生だからこそ」できること,すべきことがあるのではないかとの思いがふつふつと湧き上がりました。

 学生の立場は,他学部の学生や職種との垣根が低いという特徴があります。特に医学生は,医師と市民の間にいて,市民目線で活動できます。この強みを生かし,2016年3月に子どもたちを健康でHappyにするための活動を行う学生団体「Smile Future JAPAN」を,「こどもどこ」のメンバーを中心に立ち上げ,まずは抗菌薬の適正使用について周知・啓発する活動を始めることにしました。

「抗菌薬は風邪に効かない」を子どもと保護者にどう伝えるか

 東北大医学部の学生を中心に約35人の学生スタッフが,「さよならバイキンだいさくせん――この冬,風邪知らず」と題したワークショップを2016年11月20日,同大病院の具芳明先生をはじめ,総合感染症科や小児科の先生方の指導の下,同大星陵会館で開催しました。対象は小学校までの子どもとその保護者で,当日は約90人が参加。「抗菌薬は風邪には効かず,正しく使うことが大切」と伝えることを目的に,子どもでも楽しく学べるよう,次のような催しを行いました。

1)お話・劇「かぜひきくんを救え」(写真❶)
 風邪に抗菌薬は効かず,耐性菌が生まれる原因になること,風邪の一番の治療法は暖かくして休むことなどを,医学生の寸劇や医師との対話で伝えました。

写真❶ 医学生による寸劇で耐性菌が生まれる原因や,風邪の対処などを楽しく伝える(左端は筆者)。

2)手洗いブース「おててのばいきん,ばいばいきん」
 洗い残しを蛍光塗料で可視化し,「手洗い体操」で正しい手の洗い方を実践。

3)マスクブース「マスクでおしゃれにへーんしん」(写真❷)
 デモンストレーションでマスクの重要性を伝えた他,シールやモール,マスキングテープなどを使い,デコレーションマスクを作って,マスクを好きになってもらいました。

写真❷ 風邪の予防に重要なマスクを知ってもらうため,デコレーションマスクを作る。

4)「お医者さん体験」ブース
 医療への恐怖心を払拭することも目的に,白衣を着て聴診器を使い,ぬいぐるみの患者の風邪や,インフルエンザの診察を体験してもらいました。

5)おくすりブース「ばいきんバスターズ」(写真❸)
 抗菌薬のクイズや薬の飲み合わせのパズル,“抗菌薬ハンマー”を使ったもぐらたたき(細菌は倒せるが,ウイルスには効かない)といったゲームを実施し学んでもらいました。

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