第54回日本癌治療学会開催
2016.11.07
がん医療は何をどう治し,癒やすべきか
第54回日本癌治療学会開催
第54回日本癌治療学会学術集会が2016年10月20~22日,中野隆史会長(群馬大大学院)のもと「成熟社会における,がん医療のリノベーション」をテーマに,パシフィコ横浜(横浜市)にて開催された。本紙では,今年ノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅良典氏(東工大)による特別講演と,成熟した社会におけるがん薬物療法について議論したシンポジウムの模様を紹介する。
“人がやらないことをやりたい”との思いが,世紀の発見に
大隅良典氏 |
オートファジーの概念は1960年代に提唱されたものの,検出の難しさや定量的解析法がなかったことなどから,長らく進展を見せなかった。“人がやらないことをやりたい”という思いで研究に取り組んできたと語った氏は,植物細胞の90%以上の体積を占めるにもかかわらず,細胞内の「ごみ捨て場」程度に考えられていた液胞に着目。液胞が酸性のコンパートメントであること,さまざまな加水分解酵素を含むことなどから,真核生物におけるライソソームと同様の分解機能を有していると仮説を立てた。液胞が分解にかかわっているとすれば飢餓状態で最も活発に活動すると考え,加水分解酵素欠損酵母の液胞を飢餓状態下で観察し,初めてオートファジーを光学顕微鏡で確認した。その後電子顕微鏡を用いて,オートファジーの過程の全容を明らかにした。
さらに遺伝学的解析に着手した氏は,3万8000株もの酵母の変異体を観察し,オートファジーにかかわる14の「ATG遺伝子」の発見に成功した。ATG遺伝子は高等動植物細胞でも基本的に保存されており,オートファジーが真核生物の出現初期に獲得されたものであることもわかった。こうした発見により,現在オートファジー研究は急速な発展を見せている。
氏は最後に,「オートファジー研究はまだ歴史が浅く,発展途上の領域。明らかにされていないことも多く,実験結果の集積が重要である。オートファジーを初めて観察してから約28年が経ったが,ここまでやってこられたのは多くの人の協力・努力があったから。これからも未解決の問題の解明を進めていきたい」と述べ,降壇した。
がん薬物療法の在り方を考える
中野隆史会長 |
最初に登壇した安藤雄一氏(名大病院)は,高齢者を対象とした臨床試験が...
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