金原一郎記念医学医療振興財団贈呈式
2016.10.31
金原一郎記念医学医療振興財団
第60回認定証(第31回基礎医学医療研究助成金)贈呈式開催
金原一郎記念医学医療振興財団(理事長=東大名誉教授・野々村禎昭氏)は,このほど「第31回基礎医学医療研究助成金」の交付対象者として74人(助成総額4015万円)を選出。2016年10月13日に,医学書院(東京都文京区)にて第60回認定証贈呈式を開催した。
開催に際して,金原優同財団業務執行理事(医学書院代表取締役社長)が,医学書院の創業者・金原一郎の遺志を継いで設立された同財団の概要を紹介。今回の助成金交付をもって,同財団の累計助成額が10億円を超えたと述べた。選出された対象者をたたえ,「この受賞を励みとして,さらに良い研究に結び付けていってほしい」と激励した。
認定証贈呈の後,同財団理事長で選考委員長を務める野々村氏が,今回の選考経過について説明。前回の42人から交付対象者が大幅に増えたが,申請数の増加や研究レベルの向上によって選考の議論は伯仲したと話し,「資金面で基礎的な医学研究にとって苦しい時代となりつつあるが,そうした状況の中でも負けずに良い研究を続けてほしい」と期待を述べた。
続いて交付対象者を代表して今井正樹氏(東大医科学研究所准教授・助成対象「鳥インフルエンザウイルスのヒト気道細胞馴化に関わるアミノ酸残基の同定」)があいさつに立った。本研究の最終目的は「パンデミックインフルエンザの出現メカニズム」の一端を明らかにすることにあるという。氏は,20世紀に4回起こったパンデミックは,いずれも鳥インフルエンザウイルスによるものだと述べ,「ヒトの間で流行する可能性の高い鳥インフルエンザウイルスを検知できるようにし,人々の疫病予防に貢献したい」と抱負を語った。
●金原一郎記念医学医療振興財団
平成28年度上期助成事業・第31回基礎医学医療研究助成金交付対象者
No. | 氏名 | 所属機関(略称) | 助成対象 |
1 | 東 浩太郎 | 都健康長寿研 | ビタミンKの生体作用を媒介する新規γグルタミル・カルボキシラーゼ基質蛋白質の探索・同定とその機能の解明 |
2 | 飯田 智哉 | 札幌医大/消化器内科学 | 炎症性大腸発癌の機序における低分子量GTP蛋白Ralの役割 |
3 | 井澤 俊 | 徳大/医歯薬/口腔顎顔面矯正学 | 内分泌撹乱物質ダイオキシン受容体AhRによる骨代謝調節機構の解明 |
4 | 伊野部 智由 | 富山大/工学/生命工学科タンパク質システム工学 | プロテアソームによる蛋白質分解の革新的制御方法の開発とその応用 |
5 | 今井 正樹 | 東大医科研/感染・免役部門ウイルス感染 | 鳥インフルエンザウイルスのヒト気道細胞馴化に関わるアミノ酸残基の同定 |
6 | 梅本 英司 | 阪大/感染免疫学/免役制御学 | グリセロリン脂質の生合成異常による大腸炎発症機構の解明 |
7 | 遠藤 誠 | 国立がん研セ/骨軟部腫瘍・リハビリテーション科 | ゼブラフィッシュを用いた肉腫患者由来異種移植片(PDX)モデルおよび遺伝子改変肉腫モデルの作成 |
8 | 及川 恒一 | 慈恵医大/内科学/消化器肝臓内科 | 新規 FL-HCC patient-derived xenograft (PDX) tumor model を用いた肝癌幹細胞制御機構の解明 |
9 | 沖米田 司 | 関西学院/理工/生命医化学科 | オートファジー関連因子ATG8ホモログによる異常膜タンパク質の分解制御機構の解明 |
10 | 奥平 桂一郎 | 徳大/医歯薬/製剤分子設計学 | ABCタンパク質ABCA7の筋肉再生における新しい生理的意義の解明 |
11 | 小野 岳人 | 東医歯大/分子情報伝達学 | 大規模ケミカルライブラリーを基盤とした骨粗鬆症に対する新規治療薬の探索 |
12 | 柏原 俊英 | 信大/医学科分子薬理学 | 交感神経がL型Ca2+チャネルを介して致死的心室性不整脈を生じる分子機構の解明 |
13 | 金本 聰自 | 広大/分子細胞情報学 | 小胞体ストレスによって亢進するエクソソーム分泌機構の解明とそれを応用した疾患診断法の新規開発 |
14 | 華表 友暁 | 浜松医大/腫瘍病理学 | 深層学習による腫瘍細胞表現型の画像検出 |
15 | 苅谷 慶喜 | 福島医大/生化学 | 接着分子による上皮・間葉変換(EMT)誘導機構の解明 |
16 | 河端 暁子 | 神大/感染症センター/臨床ウイルス学 | ヒトヘルペスウイルス6感染に必須である宿主因子の同定とその意義に関する研究 |
17 | 神戸 大朋 | 京大/生命科学 | 細胞外ヌクレオチド代謝における亜鉛の働きについての検討と実証 |
18 | 木戸屋 浩康 | 阪大/微研/情報伝達 | 生体内分子イメージングによる、真の腫瘍血管形成メカニズムの検証 |
19 | 久保 智広 | 山梨大/医学域基礎医学系 | チューブリンポリグルタミン酸化修飾による鞭毛・繊毛運動機構の追及 |
20 | 倉石 貴透 | 金大/医薬保健薬/生体防御応答学 | 新規ユビキチンリガーゼSherpaによる自然免疫シグナリング制御機構の解明 |
21 | 小玉 尚宏 | 阪大/消化器内科学 | トランスポゾンとCRISPR/Cas ライブラリーを用いたNASH由来肝癌遺伝子の網羅的探索 |
22 | 坂口 昌徳 | 筑大/睡眠 | 成体脳のニューロン新生から明らかにする睡眠依存的な記憶固定化の分子メカニズム |
23 | 笹井 紀明 | 奈良先端大/バイオサイエンス/発生医科学 | 中枢神経系の器官サイズを制御する細胞内外のメカニズムの解明 |
24 | 指田 吾郎 | 熊大/国際先端医学 | 加齢による造血器腫瘍の発症メカニズムと予防法の検証 |
25 | 佐藤 和秀 | 名大/病態内科呼吸器内科学 | DLL3をターゲットとした肺小細胞癌・大細胞癌の対する新規近赤外線免疫光線治療法の開発 |
26 | 重水 大智 | 東医歯大/難治研/ゲノム応用医学/医科学数理 | エクソームデータからLongINDEL検出法の開発とLong INDELを介した疾患原因遺伝子の解明 |
27 | 島田 緑 | 名市大/細胞生化学 | 乳癌の病態形成に寄与するChk1標的因子の機能解明 |
28 | 白石 洋一 | 名大/理/生命理学/生体調節論/形態発生学G | 遺伝性四肢形態異常の遺伝子治療にむけたHox標的遺伝子の網羅的な同定と機能解明 |
29 | 新澤 直明 | 阪大/微研/分子細菌学 | 百日咳における咳発作の発症メカニズムの解明 |
30 | 鈴木 拓 | 札幌医大/分子生物学 | 慢性炎症からの発がんに関与する長鎖 noncoding RNA の解析 |
31 | 鈴木 マリ | 都医総研/運動・感覚システム/糖尿病性神経障害 | In vivo スクリーニングによるプリオノイド化αシヌクレインの脳内伝播メカニズムの解明 |
32 | 瀬海 美穂 | 京大/免疫細胞生物学 | 胸腺上皮幹細胞の活性を制御するメカニズムの解明 |
33 | 千住 洋介 | Helsinki Univ./Biotechnology/ Lappalainen lab. |
上皮形態形成における細胞間接着の制御機構に関する研究 |
34 | 高島 誠司 | 信州大/繊維学部/応用生物科/生物機能科学 | 乏精子症・無精子症で見いだされたヒト雄性不妊の原因/感受性遺伝子候補の機能を遺伝子改変マウスにて解析する |
35 | 髙田 健介 | 徳大/先端酵素研/免疫系発生学 | 正の選択を介したT細胞の機能的教育が生体内免疫応答および生体防御に及ぼす影響 |
36 | 高橋 忠伸 | 静県大/薬学研究院/生化学 | ヒトパラインフルエンザウイルス感染における糖鎖受容体の機能グライコミクス |
37 | 高橋 勇人 | 慶大/皮膚科学教室 | 末梢非リンパ組織における自己反応性CD4+T細胞による標的抗原認識機構の解明 |
38 | 武石 昭一郎 | Albert Einstein College/ Dept.Cell Biology |
静止期維持機構を破綻させることにより前立腺がん幹細胞を根絶する |
39 | 多根(橋本)彰子 | 理研/統合生命研セ/免役シグナル研究G | 免疫T細胞内ホスファターゼの機能不全による自己免疫疾患の発症機序の解明 |
40 | チョードリ MD エマムッセライン |
愛媛大/分子細胞生理学 | 睡眠覚醒リズムと記憶の固定化におけるマイクログリアの役割 |
41 | 津田 明彦 | 神大/理学研/有機化学 | アミロイドタンパク質の凝集と流動におけるメカノセンシング機構の解明とその制御 |
42 | 津元 国親 | 阪大/薬理学講座分子・細胞薬理学 | 薬物誘発不整脈における心室性不整脈の発生メカニズムに関する研究 |
43 | 寺町 順平 | 徳大/医歯薬/口腔組織学 | 骨髄腫抗腫瘍活性と骨再生をもたらす新規分子標的薬の創出 |
44 | 土居 裕和 | 長大/医歯薬/先進予防医学 | オキシトシンと恐怖症重症度との関連性についての行動遺伝学的研究 |
45 | 中岡 博史 | 遺伝研/総合遺伝研究/人類遺伝研究 | 子宮内膜症感受性領域におけるクロマチン相互作用を介した転写制御メカニズム解明 |
46 | 中奥 敬史 | 国立がん研セ/ゲノム生物学研究 | 肺腺がんにおけるRET融合遺伝子標的治療に対する耐性機構の解明 |
47 | 中嶋 悠一朗 | 東北大/学際科学研/新領域創成 | 上皮構造の維持と腫瘍化を抑制する細胞分裂方向の分子基盤 |
48 | 中司 敦子 | 岡大病院/腎臓・糖尿病・内分泌内科 | 腎尿細管細胞におけるライソゾーム機能の破綻メカニズムの解明 |
49 | 西田 基宏 | 生理研/心循環シグナル研究 | 機能性食品による臓器連関を介した心血管病リスク軽減の分子機構の解明 |
50 | 塗谷 睦生 | 慶大/薬理学教室 | 脳内水チャネルの制御様式の解明 |
51 | 橋本 大吾 | 北大病院/血液内科 | リンパ間上皮細胞によるホメオスターシス維持機構の解明 |
52 | 原口 省吾 | 昭大/医学/生化学 | 夜間光曝露による胎児脳におけるエピゲノム変化 |
53 | 原口 直紹 | 阪大/外科学/消化器外科学I | リソソーム顆粒崩壊による大腸癌幹細胞標的化治療の開発 |
54 | 原田 浩 | 京大/放射線生物研セ/がん細胞生物学 | 低酸素応答機構とがん抑制遺伝子のクロストークによるがん悪性進展制御機構の解明 |
55 | 東 洋一郎 | 高知大/薬理学 | 細胞内キレータブル亜鉛によるミクログリア活性化制御機構の解明―脳卒中後遺症の克服を目指して― |
56 | 福井 竜太郎 | 東大医科研/感染遺伝学 | TLR7依存的な自己免疫疾患に腸内細菌が与える影響の解析 |
57 | 藤本 崇宏 | 京府医大/分子病態病理学 | 脳型ジストロフィン分子ネットワークに着目した知的障害治療法の探索 |
58 | 藤原 亨 | 東北大/血液免役科 | 新規赤血球特異的ミトコンドリア蛋白質FAM210Bの解析 |
59 | 邊見 弘明 | 和歌山医大/先端医学研究所/生体調節機構 | 腸管免役恒常性を中心としたケモカイン受容体XCR+樹状細胞サブセットの機能的意義の解析 |
60 | 堀 昌平 | 理研/統合生命研セ/免役恒常性研究 | 制御性T細胞分化における細胞記憶形成メカニズムの解明 |
61 | 本間 あや | 北大病院/耳鼻咽喉科・頭頸部外科 | 時計遺伝子によるアレルギー性鼻炎病態修飾の解明と概日リズムに着目した新規治療戦略の開発 |
62 | 増田 茂夫 | 阪大/心臓血管外科 | iPS臨床における造腫瘍性回避技術の新規開発~分子標的治療薬を用いて~ |
63 | 丸山 史人 | 京大/微生物感染症学 | ファージ駆動型エピゲノム変化がもたらすA群レンサ球菌の表現型多様性の解明 |
64 | 水関 健司 | 阪市大/神経生理学 | 海馬・嗅内皮質の長距離投射GABA作動性神経細胞の領域間相互作用における役割 |
65 | 宮武 聡子 | 横市大/遺伝子診療部 | ネマリンミオパチーの新規遺伝子同定 |
66 | 村田 知弥 | 関西学院/理工/生命医化学科 | 「絶望行動」発現の分子メカニズムに関する研究 |
67 | 森川 鉄平 | 東大/人体病理学・病理診断学 | 間質細胞による化学療法抵抗性の機序の解明 |
68 | 森田 剣 | 京大/人間健康科学/血液/生体防御学 | 骨髄異形成症候群(MDS)における分化誘導因子KLF4の機能解明と新規抗癌治療薬の開発 |
69 | 守時 良演 | 名市大/腎・泌尿器科学 | ヒト停留精巣における精祖細胞(gonocyte)分化異常の解明 |
70 | 安河内 友世 | 福岡大/薬/統合臨床医学/免役・分子治療学 | 口腔扁平上皮癌の浸潤・転移を規定する唾液中短鎖非コードRNAの同定と機能解析 |
71 | 柳 輝希 | 北大/皮膚科学 | 表皮特異的ノックアウトマウスを用いたミトコンドリア分裂関連分子DRP1の紫外線発癌における機能解析 |
72 | 山澤 一樹 | 東京医療セ/臨床遺伝センター/小児科 | メチル化異常に起因する先天異常症候群においてヒドロキシメチル化が果たす役割の解明 |
73 | 好井 健太朗 | 北大/獣医/環境獣医科学/公衆衛生学 | フラビウイルス感染を制御するウイルス由来長鎖ノンコーディングRNAの作用機序の解明 |
74 | 六反 啓文 | 国立がん研セ/がんゲノミクス研究 | MYH9遺伝子異常が細胞形態や腫瘍悪性度に与える影響の分子機序の解明と、関連疾患の診断マーカーの確立 |
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