医学界新聞

2016.10.10



Medical Library 書評・新刊案内


マイナー外科救急レジデントマニュアル

堀 進悟 監修
田島 康介 編

《評 者》林 寛之(福井大病院教授・総合診療部)

当直で頑張っている医師の強い味方になる一冊!

 確かに救急外来では実にバラエティ豊かな訴えの患者が行き来する。専門分化が進んだ昨今であればこそ,「専門以外の疾患を診て訴えられたらどうしよう」という当直医の不安はよくわかる。でもね,患者も条件は同じなんですよ。救急となれば背に腹は変えられず,患者も医者を選べない。相思相愛といかない条件下での診療こそ,「患者の期待に応える医療」であって,自分の好きなものしか診ない「選り好みの医療」ではないのだ。当直で頑張っている先生方は本当に偉い!

 一方,「困ったらいつでも呼んでもらっていいですよ」というオフィシャルな他科コンサルトルールはあっても,いざコンサルトすると「マジ? この程度で呼びつけたの?」といったように,各科から見れば初歩中の初歩の処置で済んでしまうということも少なくない。そんな時に強い味方が本書なのだ。

 マイナー外科と侮るなかれ。例えば,「顔面外傷なんて,気道さえ確保できていたら慌てないよ」という通説(?)だけでは外来は回らない。顔面の縫合も何を目安に縫合したらよいか,どんな場合に専門科を呼ぶべきかの判断は結構難しい。口唇のvermillion borderをまず合わせるというのは,形成外科では当たり前でも,他科の医者がいつも通りに端っこから縫い始めると外見上痛い目に遭う。耳介もただ縫うのではなく,ボルスター固定をすると良い形が保てて便利。

 口腔外科・歯科に関する患者も多いが,痛み止めだけ出しておしまい……にならないように本書を活用してはどうだろうか。なかなか歯に関する知識を仕入れる機会が少ない医師にとって,本書は結構詳しく解説してあり,安心して患者対応できるようになるだろう。確かに顎の脱臼くらいで呼ばれたら……なんてことを言ってはいけないが,顎の脱臼もきちんと治せるようになるはずだ。

 編者の田島先生(藤田保健衛生大学病院教授)が整形外科医兼救急医のため,当直医の視点で整形外科がなかなかうまくまとまっている。見逃しやすい骨折をまとめてあるのが,当直医にとってうれしい。特に股関節骨折では「CTで骨折が診断できなくても,骨折を疑ったら入院させておくこと」(p.129)というのは,実に重要なアドバイスである。MRIでしか指摘できない股関節骨折では,患者が痛みをこらえて根性で歩くこともできるからつい見逃してしまうので注意されたい。

 眼科は比較的緊急疾患が少ないが,それでも急性緑内障発作,網膜中心動脈閉塞症は緊急性が高くすぐに眼科を呼ばないといけないので,本書を通読してほしい。視神経管骨折は眼科じゃなくて耳鼻科を呼ぶとある(病院によっては脳外科)が,確かに視神経管骨折では眼科を呼ぶんじゃないということは知っておくとよい。

 その他,耳鼻科,泌尿器科,皮膚科など多岐にわたり,各専門科でもうなる内容もきちんと記載してあり,非専門科の医師にとっては重宝する仕上がりになっている。「各科の常識は非専門科の非常識」(p.viii)ということで,各科教科書のコンパクト版という仕上がりになっている。

B6変型・頁322 定価:本体3,800円+税 医学書院
ISBN978-4-260-02545-4

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