医学界新聞

2016.10.03



第50回日本作業療法学会開催


清水兼悦学会長
 第50回日本作業療法学会が9月9~11日,清水兼悦学会長(札幌山の上病院豊倉康夫記念神経センター)のもと,ロイトン札幌,他(札幌市)で開催された。日本に作業療法士が誕生して50年を経たことを受け,「半世紀の実績と将来への展望――日本の作業療法を拓く」と掲げた今回,演題数は過去最多の1569演題となった。本紙では,認知症患者とその家族が少しでも長く安定した生活を送るために,作業療法士がどのような評価と介入を行うべきかを議論したシンポジウム「これからの認知症OTのかたち」(座長=九州保健福祉大・小川敬之氏,広島大大学院・宮口英樹氏)の模様を報告する。

正しく評価し,言語化して情報共有を

 高齢者の約4人に1人が認知症またはその予備軍と言われる中,高齢化の進展に伴って日本の認知症患者は増え続けている。2013年から地域包括支援センター等への設置が進む「認知症初期集中支援チーム」は,認知症患者を介護職に引き継ぐことを念頭に,約6か月間医療職と介護職が協働して,認知症患者の自宅訪問などの支援を展開するものだ。作業療法士としてチームに入る松浦篤子氏(荒尾こころの郷病院)は,認知症患者本人とその家族の話や生活環境から状況の評価を行い,チーム会議を通じて介入を決定するプロセスに加わっている。作業療法士の強みとして氏は,「自宅にある椅子などの環境面を見て,認知症患者のひざの状態を推測できる」といった客観的視点があると述べ,環境やサービスの向上が可能になると語った。

 河合晶子氏(三重県立こころの医療センター)は,認知症患者が入院する原因の5割近くを,介護者への「暴力・介護抵抗」が占めていることを紹介。その背後には行動・心理症状や身体合併症の悪化などがあるという。医療支援の短期集中化と地域連携を推進するために作業療法士は,①認知症患者の失行や状況理解の分析をもとに認知症患者と作業療法をつなぐ,②その知見を退院前訪問指導等で地域...

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