医学界新聞

2016.08.01



Medical Library 書評・新刊案内


皮膚がんバリエーションアトラス

田中 勝,安齋 眞一 編

《評 者》名嘉眞 武国(久留米大教授・皮膚科学)

通読することにより皮膚がん診療の経験値がアップ

 このたび医学書院より『皮膚がんバリエーションアトラス』というタイトルの書籍が発行された。編集は田中 勝先生(東女医大東医療センター教授)と安齋眞一先生(日医大教授)のお二人である。お二人の専門領域はダーモスコピーと皮膚病理組織学であることは周知の通りである。完成させるまでの想像を絶するような時間と労力がまさに伝わってくる力作である。

 まず全体の構成については,皮膚がんの代表として第I章「基底細胞癌」,第II章「有棘細胞癌およびその類症」,第III章「悪性黒色腫」,第IV章「その他の皮膚がん」を掲げ,最後に第V章「皮膚がんと鑑別を要する良性疾患」と大きく5章に分類している。そして各章の冒頭に「臨床像と病理組織像のポイント」として,全て安齋先生ご自身が解説している。ここでの病理組織像の写真は鮮明度が素晴らしく,内容も若い先生方でも明確に理解しやすいものとなっている。また近年提唱された疾患名の解説も盛り込まれ,最新の知識も学べるものとなっている。評者も大変勉強になり,今後大いに参考にできるものと確信した。

 各項目では,それぞれの病型と部位を細かく分類した上で,全ての症例に臨床像とダーモスコピー像の写真を隣接させ,それぞれについて解説している。そして代表的な症例については拡大したダーモスコピー像に矢印や矢頭などを用いて詳細に解説している。ここでの解説は大変理解しやすい内容となっており,田中先生の初級から上級者まで全ての読者に対する優しい配慮がうかがわれる。

 ただ,本書で解説されている代表的腫瘍については,事前に診断に有用となる基本的なダーモスコピー所見について他の成書で学んでいただきたい。その上で本書を通読するとバリエーションに関する知識が自然と頭に入ってくる。なぜなら本書には他に類を見ない驚くほどの膨大な症例が収載されているからである。これらの症例を集めるには,編集のお二人の先生だけでなく経験豊富な執筆者の先生方からの症例提供があったことは言うまでもない。

 ぜひ初級者のみならず経験豊富な方も一度ご覧いただきたい。あまりに膨大な内容で一気に読破するのは大変ではあるが,各腫瘍のバリエーションごとに学...

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