医学界新聞

2016.07.25



Medical Library 書評・新刊案内


トライ! 看護にTBL
チーム基盤型学習の基礎のキソ

五十嵐 ゆかり 編著
飯田 真理子,新福 洋子 著

《評 者》瀬尾 宏美(高知大病院教授・総合診療部)

いますぐ試してみたくなる! 使える実践書

 医療系大学や専門学校の教員の多くは,その道のエキスパートであっても教育学のエキスパートはほとんどいないでしょう。自分の受けた教育を思い出しながら先輩として教壇に立ったものの,何だかうまくいかなくて挫折感を味わった経験をお持ちの方も少なくないと思います。さらに最近では,卒業時のコンピテンシー,すなわち「○○ができるようになる」という能力目標を学生が獲得することを期待されるようになり,医療教育のハードルはますます高くなっています。このため能動的学習が推奨され,PBL(Problem-Based Learning)を導入されている教育機関も少なくありません。確かにPBLは素晴らしい学習法ですが,手間をかけた割にグループや学生それぞれがどのような能力を獲得したのかが見えにくいのも事実です。

 このような中で注目されているチーム基盤型学習(TBL;Team-Based Learning)ですが,2008年に日本で初めての教育ワークショップが開催され,2009年に米国TBLC(Team-Based Learning Collaborative)編集テキストの日本語版が出版されました。その後,日本オリジナルのテキストが待ち望まれていましたが,このたび,五十嵐ゆかり先生たち聖路加国際大チームが素晴らしいテキストを出版されました。「学生がやる気を出したくなる授業がしてみたい」「朝から教室に熱気が溢れる授業がしてみたい」,そして「教員にとっても『やってよかった』と思える授業がしてみたい」。そんなあなたにぴったりの指南書が『トライ! 看護にTBL』なのです。そして本書は看護だけでなく,医学,歯学,薬学をはじめ,さまざまな医療系教員にとっても「すぐに使える実践書」と言えます。

 本書のサブタイトルには「基礎のキソ」と銘打たれていますが,コンパクトながら,TBLの概念,講義からの移行方法,実践のこつまで,これからTBLを導入してみようと考えている教員にとって「痒い所に手が届く」内容となっています。さらにTBLに関する研究成果についても紙面が割かれており,導入前の不安にも答えてくれます。何より,少し読み進めていただければ,うずうずして早く試してみたくなるはずです。TBLの価値は実際にやってみて実感できるものです。まさに「トライ!」につながる一冊と...

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