医学界新聞

インタビュー

2016.07.25



【interview】

TBLの鍵は4つのS

五十嵐 ゆかり氏(聖路加国際大学ウィメンズヘルス・助産学 准教授)


――学習効果が高いTBLですが,教員の負担はいかがでしょうか。

五十嵐 導入時は大変ですが,翌年からは全てを一から作るわけではないので,負担は随分減ります。TBLは新しい手法ですが,一つひとつの構成要素は,例えば小テストなど,皆さんが普段から利用している方法です。それらを組み合わせているので,そこまで難しく考えなくても大丈夫です。

――事前準備のポイントは?

五十嵐 TBLは「逆向き設計」で,まずは学習目標をじっくり考え,授業設計をすることが大切です。それに合わせて,応用演習問題,RAT,予習資料の順に作成します。応用演習問題は目標に直結するので,特に丁寧に作ります。私たちの場合,臨床現場での対応を学ぶことが目標なので,実習で学生が困りがちな場面を取り上げています。

 効果的なTBLの鍵は,4つのSです。根拠に基づいた(Specific),重要な(Significant)課題を作成し,全員に同じ(Same)問題に取り組ませ,一斉(Simultaneous)に発表してもらいます。

――全チームが一斉に解答を提示すると,答えの違いが一目瞭然となるので非常に盛り上がりますね。

五十嵐 はい。その直後のチーム間ディスカッションで自分たちの解答の正当性や妥当性を主張しなくてはならないので,結論に達した根拠を明確に説明できるよう,チーム内で十分に吟味する必要があります。他のチームと異なる解答だった場合には,チーム内,チーム間ともに活発なディスカッションが行われます。

――その際のファシリテーションで心掛けていることはありますか。

五十嵐 発言しやすい場をつくることです。例えば,各チームの発言に対する評価はしない,など。「この点が良い」と言ってしまうと,別の発言がしにくくなりますから。その他にも,同じ解答を選んだチームが多いときには,他の選択肢を選ばなかった理由を尋ねるなどの変化球を投げ,学生の考えを引き出すようにしています。

 ファシリテーションとフィードバックは分けて行うこと,そして,ディスカッションをリードするのではなくあくまでもファシリテートすることの2点を念頭においています。

――今後の課題や展望はありますか。

五十嵐 他の科目との調整が課題です。学生の負担を考え,他の科目でもたくさん課題が出る時期とTBLの予習量が多くなる時期ができるかぎり重ならないように調整しなければなりません。

 今夏には,TBLを用いた国試問題のサマースクールを行います。学外も対象とするので,初めてTBLを経験する学生への効果が楽しみです。

(了)

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