医学界新聞

2016.05.23



第34回臨床研修研究会開催


 第34回臨床研修研究会が4月23日,奈良県文化会館(奈良県奈良市)にて開催された。天理よろづ相談所病院(太田茂院長)が幹事病院を務めた今回,「超高齢化社会を見据えた臨床研修」をテーマに,卒前・卒後の地域医療研修の実施の在り方や,新専門医制度開始に向けた現状について検討された2つのシンポジウムが企画され,280人の参加者が集まった。本紙では両シンポジウムの模様を報告する。


地域医療研修では,何をどのように教えるべきか

太田茂院長
 地域や高齢者との関係が不可分な医療現場を前に,医師の卒前・卒後教育ではどのような地域医療研修が求められるか。シンポジウム「超高齢化社会と地域医療研修」(座長=七条診療所・小泉俊三氏,奈良医大病院・赤井靖宏氏)に最初に登壇したのは高山義浩氏(沖縄県立中部病院)。「住民から支持される医療の実現」をめざす同院は,2012年に高齢者や終末期患者の在宅療養を支援する診療科を立ち上げ,地域の診療に初期研修医を同行させているという。氏は「自宅で生き生きと暮らす患者の姿を研修医が見れば,地域住民のニーズもおのずとわかる」とその意義を強調。研修医に,「退院後の在宅療養支援」「在宅療養を希望する終末期患者への緩和ケア」なども経験させることが臨床研修病院に求められる役割だと述べた。

 臨床研修の到達目標にある「高齢者」対象の医療はどう達成すればよいか。石松伸一氏(聖路加国際病院)は,高齢者医療の研修内容は,患者個人の老年医学的側面から集団や社会を含む公衆衛生,倫理的な問題まで広範にわたると解説し,「急性期病院の研修だけでは,退院した高齢者がその後どのように社会資源を用いて生活するかを理解するのは難しい」と指摘。慢性期やリハビリ,訪問診療,在宅医療などを含む幅広い研修が不可欠であり,併せて倫理的問題に対処できるプロフェッショナルとしての研修も実施することが重要との見解を示した。

 藤沼康樹氏(医療福祉生協連家庭医療学開発センター)は,自身の診療所に研修医を受け入れている経験から,診療所研修での指導上のポイントを例示した。患者のライフコースに焦点を当てた医療を経験させる,完全な参加型で診療に当たらせる,全てのスタッフに研修医へのフィードバックの機会を持たせるなど6点を披露。中でも,研修医には週3時間程度の自習時間を与え,毎日15分程度の指導医との振り返りの時間を設けることが,意味ある学びにつながると語った。

 世界の卒前教育における地域関連医学教育のトピックスを紹介したのは高村昭輝氏(金沢医大)。北米や豪州では,CBME(Comm...

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