医学界新聞

寄稿

2016.04.18



【FAQ】

患者や医療者のFAQ(Frequently Asked Questions;頻繁に尋ねられる質問)に,その領域のエキスパートが答えます。

今回のテーマ
皮膚疾患の外用療法

【今回の回答者】安部 正敏(医療法人社団廣仁会札幌皮膚科クリニック 副院長/褥瘡・創傷治癒研究所)


 外用療法は,皮膚科以外でも特にプライマリ・ケアの現場では患者がさまざまな種類の外用薬を求める場合も多いと思われます。しかし,時に皮膚科専門医からすると,疑問の多い処方例に遭遇することも事実です。皮膚科外用薬は“とりあえず”処方するものではなく,内服薬同様,“皮膚症状の把握→正しい診断→疾患の重症度→外用薬処方”の流れが存在します。今回は,外用療法の基礎中の基礎を取り上げます。


■FAQ1

皮膚科では副腎皮質ステロイド外用薬がよく処方されます。副作用として色素沈着を気にする患者が多いのですが,非ステロイド性抗炎症外用薬を処方すべきでしょうか?

 副腎皮質ステロイド外用薬は,皮膚科領域で最も重要な外用薬です。主として,湿疹・皮膚炎群に用いられ,現在ではOTC医薬品としても多種の外用薬が発売されております。副腎皮質ステロイドの皮膚への作用はおおむね以下の通りです。

・血管収縮作用
・膜透過性抑制作用
・炎症性ケミカルメディエーター遊離抑制作用
・アラキドン酸合成阻害作用
・免疫抑制作用
・細胞分裂抑制作用

 副腎皮質ステロイド外用薬はその強さにより5つのランクが存在します。このうち市販のOTC外用薬には上位2ランクがありません。強さの判定は主に薬剤を塗布した際の血管収縮の度合いを見ることが多く,報告により,同じ薬剤が違うランクに位置付けられることもありますが,極端に異なることはありません。病変の程度や部位により副腎皮質ステロイド外用薬のレベルを使い分けるべきですが,皮膚科医でないとなかなかわかりにくい場合も多いかと思います。肝要なことは過度に強力な外用薬を長期に使用しないことです。

 副腎皮質ステロイド外用薬を一度でも処方した経験のある医師は,その副作用は熟知しておく必要があります。主な局所副作用は,皮膚萎縮,酒さ様皮膚炎,皮下出血,接触皮膚炎,口囲皮膚炎,痤瘡,細菌・真菌・ウイルスによる表在性皮膚感染症,多毛,続発性副腎機能不全,そして投与中止によるリバウンドがあります。副作用を出さないために,症状の軽快とともに,より弱いランクの副腎皮質ステロイド外用薬に適時レベルダウンすべきであることは言うまでもありません。時に,「副腎皮質ステロイド外用薬は副作用があるので,良くなったらすぐにやめて!」などと指導する医療者が存在しますが,いきなりやめると皮膚症状は再燃することが多いため,徐々に塗布回数を減ずるか,強さをレベルダウンして,患者の皮膚の状態が良好に推移するよう配慮したいものです。

 また,強調しておきたいのは,色素沈着は副腎皮質ステロイド外用薬の副作用ではないということです。確かに,湿疹・皮膚炎が改善した後,色素沈着が残ることも多いのですが,これは炎症後色素沈着と呼ばれ,適切に皮膚の炎症が制御されない結果生じる色素沈着です。色素沈着を気にするのであれば,早期から適切なレベルの副腎皮質ステロイド外用薬を使用し炎症を抑えることで色素沈着を阻止すべきです。なお,質問内容にある非ステロイド性抗炎症外用薬では色素沈着の副作用が出ることが明らかになっており,副腎皮質ステロイドの副作用防止の観点から非ステロイド性抗炎症外用薬を使用することはお勧めできません。

Answer…色素沈着を来すのは副腎皮質ステロイド外用薬ではなく,非ステロイド性抗炎症外用薬なので,湿疹・皮膚炎群の疾患に対しての処方は勧められません。

■FAQ2

軟膏はベタベタするという患者の苦情をよく耳にします。塗り心地が良いクリームを処方するのが良いでしょうか?

 外用薬において薬効を示す物質を配合剤と呼び,それを保持する物質を基剤と呼びます......

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