医学界新聞

インタビュー

2016.04.18



【interview】

「医療的ケアの必要な子どもとその両親を支える
ケアやサービスを,創出していく必要がある」

髙橋 昭彦氏(ひばりクリニック院長/認定NPO法人うりずん理事長)に聞く


 周産期医療の進歩により,以前は生存が難しかった重篤な子どもが救命されるようになった。その中で指摘されているのが,気管切開,経管栄養,人工呼吸器装着をしているなど,医療的ケアが必要な子どもたちの受け入れ先が見つからない問題だ。その多くが在宅療養を行う実情があり,社会的な支援が乏しい中で家族が在宅でのケアに専念せざるを得ないという。髙橋氏は,栃木県宇都宮市で診療所の外来・在宅医療に携わりながら,重症障害児者レスパイトケア施設「うりずん」を運営する小児科医だ。患者・家族との交流を通し,レスパイト機能の必要性を痛感して10年目。開設後も徐々に支援の形を拡大してきた。本紙では,うりずんの活動とともに,患児やその両親を支えるために医療者には何が求められるのか,話を聞いた。


――レスパイトケア施設「うりずん」では,お子さんに対してどのようなかかわりがなされているのですか。

髙橋 まず,家族にひと時の安らぎを提供するために,自宅以外で昼間の生活場所を保証する日中一時支援事業を行っています。絵本や歌,散歩といった遊び(写真)を中心に過ごし,その間,家族に代わって排痰,排便,水分補給などの他,必要に応じて投薬などのケアを行います。安全・安心であることは当然ですが,私たちが大事にしたいのは「お子さんが楽しく過ごすことができているか」。子どもが楽しい時間を過ごしていなければ,両親は罪悪感さえ抱きかねませんからね。朝来たときよりも,元気に帰ってもらうことを目標に,子どもたちと接しています。

写真 ハロウィンのイベントでの一枚

 2012年にNPO法人となってからさらに事業を拡大し,子ども・家族のことをよく理解しているスタッフが自宅などで必要なケアと見守り支援を行う居宅介護,家から病院へといった移動支援なども始めています。さらに今年4月から,拠点の移転に伴って,児童発達支援や放課後等デイサービス,居宅訪問型保育を新たに開始しようと準備しているところです。

――現在,利用者数はどのくらいいるのでしょうか。増加傾向はありますか。

髙橋 2月の利用者の延べ人数でいうと,日中一時支援91人,居宅介護97人(通院介護含む),移動支援20人ほどでした。なお,日中一時支援の内,約10人が人工呼吸器を付けているお子さんですね。地域の方に認識されてきた影響もあると思いますが,取り組みを開始してから一貫して利用者の増加が続いています。

制度のはざまにいる子どもは増加している

――周産期医療が発展してきた中で,医療に頼らざるを得ない子ども自体が増えていると指摘されています。そして,そうした子どもの多くが,少ない支援の中,自宅で過ごしていると言われています。

髙橋 そうなのです。しかし医療的ケアが必要な状態で,在宅で過ごす子どもの正確な数・分布は,行政や学会レベルでも正確に把握できていません。

 ただ,現場にいると,両親以外に子どものケアをできる人がおらず,両親のどちらかがそうした子のケアに専念することで対応しているケースは多いと感じます。児童福祉法,障害者総合支援法といった制度も十分なものではなく,保育園や幼稚園,学校で医療的ケアが必要な子を受け入れる想定がなされていない。父親が仕事で経済的に家庭を支え,母親が就労を諦め,睡眠もままならずにケアする状況で,毎日を乗り切るしかない実態があるのです。

 また,医療のさらなる進展に伴い,最近,呼吸器を付けて歩き回れる子や,身体的な障害はあるけれど脳障害はない子どもといった,「重症心身障害児」()の定義から外れる子どもも増加しています。ここ2-3年でそうした子らがグッと増えたような印象で,彼らは既存の制度がより使用しづらい状況にあるはず。こうした医療的ケアの必...

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