医学界新聞

2015.11.16



第21回白壁賞,第40回村上記念「胃と腸」賞授賞式


 第21回白壁賞および第40回村上記念「胃と腸」賞の授賞式が,9月16日に笹川記念会館国際会議場(東京都港区)で開催された早期胃癌研究会の席上にて行われた。第21回白壁賞を受賞したのは,有馬美和子氏(埼玉県立がんセンター消化器内科)ほか「日本食道学会拡大内視鏡分類と深達度――Type R血管と組織像」[胃と腸.2014 ; 49(2): 213-21.]。また,第40回村上記念「胃と腸」賞は,九嶋亮治氏(滋賀医大臨床検査医学講座)ほか「胃型腺腫の臨床病理学的特徴――内視鏡像,組織発生,遺伝子変異と癌化」[胃と腸.2014 ; 49(13): 1838-49.]に贈られた。

有馬美和子氏 九嶋亮治氏

希少がんで認められるとされるType R血管の特徴を明らかに

 白壁賞は,故・白壁彦夫氏の業績をたたえ,消化管の形態・診断学の進歩と普及に貢献した論文に贈られる。授賞式では,選考委員を代表して八尾建史氏(福岡大筑紫病院消化器内科内視鏡部)が選考経過を説明。有馬氏らの論文は,低分化型扁平上皮癌などの希少ながんで認められるとされるType R血管について報告したもの。自験の食道表在癌316例から発見された希少がん45例のうち,16例(35.6%)でType R血管を観察し,Type R血管の出現部位,組織像,特徴を示した。受賞のあいさつで有馬氏は,「今回受賞対象となったType R血管は検討に検討を重ねた末に生み出された概念。拡大内視鏡の分野にはまだ解明されていないことも多くあるので,今回の受賞をはずみにして研鑽を積み重ねていきたい」と抱負を語った。

胃型腺腫の病理像を報告

 村上記念「胃と腸」賞は,故・村上忠重氏の業績をたたえ,消化管疾患の病態解明に寄与した論文に贈られる。九嶋氏らの論文は,国立がん研究センター中央病院で1999年から2014年の間に,胃型腺腫(胃型管状腺腫,幽門腺腺腫)と診断された胃粘膜内腺管形成性腫瘍20例を対象とした研究。胃型腺腫は偽幽門腺,すなわち胃底腺の頸部粘液細胞への分化が主体であり,GNASKRASの変異が特徴的な低異型度・低悪性度の腫瘍であると報告した。九嶋氏は,「母校には臨床画像,マクロ像,ミクロ像を対比して検討する文化がなく,早期胃癌研究会だけが勉強の機会だった。同会で行われているような消化管病理を実践したいと考えていたところ,国立がん研究センターへの誘いを受け,同僚にも恵まれ,今回の受賞につながる仕事ができた。恩師や共著者の先生方に心から感謝を伝えたい」と受賞の喜びを語った。

*授賞式の模様は「胃と腸」誌(第50巻13号)にも掲載されます。