医学界新聞

2015.10.12



ICT活用で学会の議論を双方向に

第63回日本心臓病学会の話題より


特別企画「General Cardiology Hangout」
 演者の口演が延びて質疑応答の時間が十分に取れず,質問の機会を与えられなかった。聞きたいことがあるけど,大勢の前で質問するのは恥ずかしい――。学会の場でそんな経験をしたことはないだろうか? 第63回日本心臓病学会学術集会(会期=2015年9月18-20日,会場=パシフィコ横浜)では,ICTの活用によって双方向でのディスカッションを実現させようというユニークな試みがなされた。

参加者が各自の端末から意見を随時投稿,演者らはコメントを確認しながら議論

 今回導入されたICTツールは,東京医大の学生・教職員が普段使用しているe-ラーニングポータル「e自主学習」。学術集会長の山科章氏(東京医大)の発案により,2題の特別企画において活用された。参加者らは,自身のスマートフォンやタブレット端末,PCを用いて会場Wi-Fiからe-ラーニングポータルにアクセス。各自に割り当てられたユーザー名・パスワードを入力し,ログインする。また,即興で選択式アンケートを採ることができるように,アンサーチェッカーが手渡された。

 特別企画「General Cardiology Hangout」では,「胸痛・呼吸困難を主訴とする71歳男性。狭心症でPCI施行歴あり。心不全治療とカテーテル検査のどちらを優先すべきか?」など,臨床現場で悩ましい症例を各演者が提示。参加者らは各自の端末を用いて,心電図やエコーの検査結果を確認し,自らの考える“次の一手”を投稿。前方スクリーンに表示された投稿コメントを踏まえて,演者らがさらなる討論を行った。

 また,特別企画「本音でツイート。今,若手循環器医師が考えていること,悩んでいること」(座長=慶大・香坂俊氏,東京ベイ・浦安市川医療センター・小船井光太郎氏)では,次世代を担う若手循環器内科医が集い,新専門医制度やキャリアパス,教育・研究環境,海外留学などについて意見を交換。匿名性は保たれている一方で,参加者が会場内に限定さているためか議論が荒れることもなく,自身の抱える不安や悩みなど,本音を率直に投稿していた。

 特別企画「General Cardiology Hangout」の運営に携わった水野篤氏(聖路加国際病院)は,「投稿コメントのもらい方には試行錯誤したが,アンケートを併用することでライブ感を出すことができた。今後はこうした新しい形で,双方向でのディスカッションが増えていくのではないか」と,手応えを語った。

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