医学界新聞

2015.08.31



Medical Library 書評・新刊案内


助産実践能力習熟段階(クリニカルラダー)にもとづいた
助産実践能力育成のための教育プログラム

日本助産実践能力推進協議会 編

《評 者》柳橋 礼子(聖路加国際病院副院長/看護部長)

助産実践能力の評価と標準化された教育プログラムを医療機関で活用するための書

 超高齢社会に向けた重い課題に取り組む医療機関が多い一方で,少子化も深刻な社会問題として認識されている。出生数の減少が続き,産科および小児科医師の不足などにより,医療機関の多くが産科医療の充実には苦慮している。周産期領域の体制が充実している病院での分娩数は多いが,中小病院では分娩数を増やしていくのは簡単ではない。出産年齢が遅延化・高齢化していること,また「お産に対しての希望」が多様化しているということも影響していると思われる。

 新卒の助産師にとって,自分のキャリアを考え,自律した助産師として実績を積める医療機関に就職するのは簡単ではない時代が来ている。どこの医療機関でも一定の教育プログラムで教育を受けられ,将来の目標に合った自律した実践能力を認証により保証されることは大変な進展と考える。本書は,助産師育成のための教育プログラムが詳細に説明されており,それぞれの医療機関で活用できる。

 また,本書では,標準化の核となる「助産師のコア・コンピテンシー」について第II章で述べられている。国際助産師連盟(ICM)では,1993年に「国際助産師倫理綱領」,2002年に「基本的助産業務に必須な能力」,2005年に「助産師の定義」を明らかにしているが,日本助産師会ではわが国独自に助産師に求められる能力を明確化するため,2006年に助産師の役割など明文化した「助産師の声明」を公表した。これを基盤として①倫理的感応力,②マタニティケア能力,③ウィメンズヘルスケア能力,④専門的自律的能力の4要素で構成される「助産師のコア・コンピテンシー」を明確にし,そのうちの3要素を基に助産師実践能力習熟段階(クリニカルラダー)が作成され,第IV章ではそれぞれのコンピテンシーを育成するための教育プログラムが具体的に記述されている。

 多くの施設が助産師の教育プログラムをある程度は整えていると思われるが,多様な教育機関を卒業して免許を取得している現状があり,正直なところ教育内容と評価は助産師長に任せられていると思う。このような背景の中,わが国で標準化されたクリニカルラダーと教育プログラムが作成されたことは大変有意義であり,本書が日本中の医療機関で活用されて...

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