医学界新聞

2015.07.20



第49回日本作業療法学会開催


古川宏学会長
 第49回日本作業療法学会(学会長=神戸学院大・古川宏氏)が,6月19-21日,神戸ポートピアホテル(神戸市)他にて開催された。日本に作業療法士が誕生してから50年の記念すべき年にあたる今大会では,「温故知新――五十路(いそじ)を還り将来(みらい)を展(ぶ)の」がテーマに掲げられた。本紙では,学会長の古川氏が司会を務め,初代から第四代までの歴代協会長経験者が,在職中の取り組みと後進へのメッセージを述べたシンポジウム「温故知新――歴代協会長からの提言」の模様を報告する。

先達による,作業療法士の将来像についての提言

 初めに登壇したのは,初代会長の鈴木明子氏(北大新渡戸カレッジ・在職1966-1979年)。氏は,作業療法の方法論はもちろん大切だが,それよりも「○○のために行う」という目的意識を持つことが重要であると強調。後進に対しては「次の世代にバトンを渡したので,一人ひとり元気に活躍してほしい」とエールを送った。

 「未来の作業療法士育成に向けては“人間力”を育むことが大切」。こう語った二代目会長の矢谷令子氏(日本リハビリテーション振興会・同1979-1991年)は,その実現には作業療法士同士が助け合い支え合う教育体制が,臨床・教育それぞれの現場に必要と述べた。さらに氏は,作業療法士はまずしっかり「作業」を行うべきであり,「作業療法のプロフェッショナル」と堂々と言えるようになってほしいと主張。対象者の役に立つ作業療法士育成には,協会一丸となって取り組むことが望まれると呼び掛けた。

 三代目会長の寺山久美子氏(大阪河﨑リハビリテーション大・同1991-2001年)は,今後期待する作業療法士像を10点にまとめた。その中でも,「地域生活ケアの領域で活躍できる」「認定・専門作業療法士を取得して,より質の高い専門職として活躍できる」「認知症や発達障害領域で活躍できる」「起業・開業し,成功したビジネスモデルを提供できる」などを強調。作業療法士は,市民からより認知され期待される存在になってほしいと呼び掛けた。

 最後に発言した四代目会長の杉原素子氏(新宿けやき園・同2001-2009年)は,将来への提言として,作業療法に関する“取り決め”において変えることが許されるものとそうでないものとの区別を見極めなければならないと語った。また,教育面では,作業療法士の育成に際して,教える側の能力で教育のレベルを抑え込まないことが作業療法士の能力の幅を広げることにつながるとの見解を示した。最後に氏は,人々を健康に導く専門職として,作業療法士が果たすべき役割を常に広い視野で探索・追求することが重要と締めくくった。

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