第20回日本緩和医療学会学術大会開催
2015.07.20
患者のニーズに応じた緩和医療を
第20回日本緩和医療学会学術大会開催
第20回日本緩和医療学会学術大会が,2015年6月18-20日,髙宮有介大会長(昭和大)のもと,パシフィコ横浜(横浜市)で開催された。学術大会開催20回の節目を迎えた今回,「夢をかなえる――この20年,そして,あしたへ」がテーマに掲げられ,約7800人が参加した。本紙では,若年がん患者の緩和ケアの現状と課題が提起されたシンポジウムと,終末期せん妄における治療・ケアの在り方を議論したシンポジウムの模様を紹介する。
若年がん患者への緩和医療の今
髙宮有介大会長 |
勝俣範之氏(日医大武蔵小杉病院)は,腫瘍内科医の立場から若年がん患者について俯瞰して解説した。若年性がんの特徴には,近年,乳がん,大腸がん,子宮頸がんなどの固形がんの増加がある。またAYA世代では予後が悪い“Survival Gap”があること,若年性がんを対象とした研究・社会的サポートが少ない点を問題点として挙げた。若年性がんの中でも,特に進行がんの緩和ケアに対しては,医療者のコミュニケーションの取り方や家族へのケアが課題であり,その議論が不十分であると指摘した。氏は,社会的,精神的なチームアプローチで患者のQOLが上がるとの研究結果[PMID : 7789344]を紹介した上で,今後は系統的なケアプログラムの作成やチーム医療,社会的サポートプログラムの充実が必須と語った。
臨床心理士の枷場(はさば)美穂氏(静岡がんセンター)は,発達課題からAYA世代のケアを考察した。AYA世代は,成人(高齢)がん患者が長年積み重ねてきた人生への喪失・悲嘆を生じるのとは異なり,就学や就業,結婚・出産など,先を見据えた意思決定の結果を“未来で受け取る”特徴がある。そのため,治療後の長期フォローアップ体制が必要であり,多職種が連携し,患者本人の自立性・主体性への支援について共有することが望まれると述べた。たとえ残された時間が少ない患者でも,最後まで自分らしく生きようとする意思を持っており,「今自分がすべきことは何か」という役割を模索していると語り,医療者は,家族との関係からも患者の考えを読み解くことが重要と述べた。
小児がん経験者がAYA世代に移行した際に生じる課題を検討したのは,神奈川県立こども医療センターで小児看護に携わる竹之内直子氏。思春期の段階では,身体・社会・心理の各側面に課題を抱える。その支援は長期にわたり,どこで,誰がどのように支援すべきか考えなければならない...
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