医学界新聞

2015.05.25



チーム医療における看護師の役割を議論

第29回日本医学会総会の話題より


 第29回日本医学会総会2015関西の学術講演が2015年4月11-13日の3日間,井村裕夫会頭(京大名誉教授・元京大総長)のもと,国立京都国際会館(京都市)など3会場で開催された。「医学と医療の革新を目指して――健康社会を共に生きるきずなの構築」をテーマに,今日の社会が直面する20の課題が議論の柱となった。本紙では,シンポジウム「これまでのチーム医療,これからのチーム医療」(座長=自治医大・永井良三氏,日看協・坂本すが氏)の模様を報告する。

◆社会・制度の変化を背景に,看護師に望まれる役割を考える

 2015年10月に施行される「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律」により,「診療の補助のうちの特定行為を明確化し,それを手順書により行う看護師の研修制度」が新設される。山本隆司氏(東大大学院)は,改正保助看法を中心に,チーム医療に関する法制度について解説した。今回対象となった「特定行為」は38項目。看護師が特定行為を実施するに当たっては,基本的に患者1人に対して1通の手順書が必要となる。氏は,研修を修了した看護師以外に対して「具体的指示」を出して特定行為の実施を求める場合には,当該行為の技術的な難易度に応じ,各医療機関の責任のもとで,指定研修の内容を考慮しながら必要な研修の機会を提供していく必要があるとの見解を示した。その上で,「法制度は行為を縛るだけのものではない。医療者が作り上げてきた医療の安心・安全を,国民に明示するための一つのツールであると考えてほしい」と述べた。

開会式の様子
 厚労省「チーム医療推進のための看護業務検討ワーキンググループ」の座長を務めた有賀徹氏(昭和大病院)はチーム医療の在り方について,今後のわが国における医療需要に対する提供の在り方を考えるとき,看護師のみならず,多くの職種が体系的な教育・研修を受けることで,総力を挙げて良質な医療提供を行うことが求められると主張した。氏は,横浜市で行われている救急医療の119番通報時における「コールトリアージ」による緊急度・重症度の自動識別や,香川県の地域活性化総合特区で行われている「ドクターコム」を利用した遠隔医療の可能性拡大・対面診療等の制限緩和も例に挙げながら,在宅医療・地域医療を含むこれからのチーム医療における,限られた資源の適正配分の必要性に言及した。

 栃木県の機能強化型在宅療養支援診療所において在宅医療を行っている太田秀樹氏(医療法人アスムス)は,地域におけるチーム医療を考えるには,病院とは異なる実態を認識した上で議論せねばならないと語った。地域で行われるロングタームケアにおいては,リハビリテーション・身体介護を含む医療の他に,家事援助,生活援助,社会参加の支援を行うため,チームにはそれらを担う人材が含まれる。そのような場では「キュア・ケア・ヒール」という3つの視点を持つ訪問看護師が重要な役割を果たすという。「エイジング」という治療できない変化に向き合わなければならない超高齢社会においては,QOLを重視した地域連携・多職種協働の推進が望まれる。

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