医学界新聞

2015.05.18



第88回日本内分泌学会開催


 第88回日本内分泌学会が2015年4月23-25日,伊藤裕会長(慶大)のもと「PAX ENDOCRINOLOGIA 内分泌至上主義。」をテーマに開催された(会場=東京都千代田区・ホテルニューオータニ東京)。本紙では,内分泌が深くかかわる非感染性疾患(Non-Communicable Diseases;NCDs)について,日本糖尿病学会,日本骨代謝学会,日本動脈硬化学会,日本高血圧学会の代表者が集まって意見交換した特別シンポジウムの模様を報告する。

◆NCDs制圧に向け,領域横断的な取り組みが望まれる

伊藤裕会長
 今や世界の死因第1位となっているNCDs。日本においても医療費の約3割,死亡者数の約6割を占めており,健康寿命の延伸・健康格差の縮小のため,制圧に向けた対策が行われている。

 NCDsの発症には,日常生活因子,身体的因子,社会的・精神的因子があり,内分泌が深くかかわっている。糖尿病,肥満症,脂質異常,高血圧などの心血管障害を来すNCDsの多くが内分泌代謝疾患であり,増加の一途をたどる乳癌や前立腺癌の発生・増悪にも内分泌かく乱物質が関与する。

 特別シンポジウム「NCDsサミット『日本におけるNCDsの現状とその制圧に向けての提言』」(座長=伊藤裕氏)においては,門脇孝氏(東大大学院)が糖尿病,松本俊夫氏(徳島大)が骨代謝,寺本民生氏(帝京大)が動脈硬化,島本和明氏(札医大)が高血圧について,各学会の立場から日本の現状を報告した。

 松本氏はNCDsを引き起こす内分泌疾患を具体的に示しながら,「これらのNCDs疾患発症の原因・誘因となる数多くの内分泌疾患の的確な診断と早期治療が発症予防に極めて重要だ」と述べた。そのためには,遺伝因子に加え環境因子によるepigeneticな影響が及ぼす発症・増悪機序の解明に向けた研究や治療法の開発の推進が必要だという。特に骨粗鬆症・変形性関節症・サルコペニアなどの筋骨格系障害はQOLを著しく低下させる。その他のNCDsの克服により寿命は一層延伸すると予想されるが,健康で幸福な生活の確保をめざすには,筋骨格系障害を予防することによる社会生活機能の保持・改善,すなわちQOLを維持した健康寿命の増進を図る必要があると強調した。

 総合討論では,メタボリックシンドロームを保健指導項目に加え,国民への啓発を行ったことによるNCDsの減少効果に触れた上で,「行政とも連携して健診・保健指導を一層促進すること,さらに妊婦・小児・高齢期までの徹底した食育・運動指導を行うことが日本のNCDs撲滅に寄与する」との意見を,学会代表の4氏が一致して示した。島本氏はさらに,家庭用高血圧計の普及による高血圧予防への意識向上にも言及し,血糖値測定においても低侵襲な家庭用機器が開発されれば,高血圧同様,高血糖予防への意識が高まるのではないかと,企業と共同で行う機器開発の重要性を説いた。

 今後,高齢化が一層進む中では,ライフステージのどの段階から,どのように介入していくべきかを考え,先制医療・個別化医療を促進することがますます重要になっていくだろう。「細胞情報伝達,臓器間連関,体内ホメオスタシスをつかさどるホルモンは全ての生命現象,疾患発症の根幹に位置し,内分泌学は内科学の王道となるべきである」との熱い想いを今大会のテーマに託したという伊藤氏は,「NCDsは合併症も多い。今後も,各疾患の専門家のみで取り組むのではなく,複数の領域が協力して予防と管理の活動を進めていく必要がある」と締めくくった。

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