医学界新聞

2015.04.20



Medical Library 書評・新刊案内


トラブルに巻き込まれないための医事法の知識

福永 篤志 著
稲葉 一人 法律監修

《評 者》篠原 幸人(前・国家公務員連合会立川病院院長/東海大名誉教授/前・日本脳卒中学会理事長)

医療従事者の目から見た,他に類を見ない解説書

 交通事故大国というイメージが強い米国でも,実際には年間の交通事故死者数よりも医療事故死者数のほうが多いだろうと言われている。今から8年ほど前の『New England Journal of Medicine』誌にHillary ClintonとBarack Obamaが連名で,医療における患者の安全性に関して異例の寄稿をしたほどである。

 日本における医療過誤死者数ははっきりとは示されていないが,医事関係訴訟は年間700-800件はあるという。患者ないしその家族の権利意識の高まりの影響が大きいが,マスコミの医療事故報道や弁護士側の動きも無視できない。

 しかしわが国の多くの医療関係者や病院自体が従来この医事訴訟ということに関し,あまりに無知かつ無防備であった気がする。

 著者の福永篤志氏は慶大医学部卒業後,脳神経外科医として働き始めたころ,最善の医療を尽くしても結果が伴わなかった症例で訴訟に巻き込まれることがあるという現実を知り,脳神経外科医を続けながら大東文化大学法科大学院に入学し,苦労して医学博士のみならず法務博士号を取得された大変な努力家でもある。

 本書はそのような著者の立場から,他に類を見ない医療従事者の目から見た医事法の見方や医療訴訟のしくみ,医師の権利と義務,患者の権利と義務,日常診療に関連する法律の解釈などを,法律用語に疎い私などにもわかりやすく,判例や関連する条文などを付記して解説されている。

 本書の特徴の一つは冒頭にこの本の利用法が親切にも述べられており,また各項目がQuestion and Answer形式になっていて誠に読みやすい。医師として根本的な「なぜカルテを書かなければならないか...

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