医学界新聞

寄稿

2015.04.20



【視点】

日本在宅ケアアライアンスが目指すもの

新田 國夫(医療法人社団つくし会理事長/日本在宅ケアアライアンス議長)


 2014年の医療法改正により,在宅医療の重要性が地域包括ケアシステムの中に明確に位置付けられた。地域医療ビジョンの策定において,市区町村ごとに将来の在宅医療の必要量を示すとともに,在宅医療を担う医療機関や訪問看護施設の提供体制に関する目標や役割分担,療養者の病状変化に応じたかかわり方が示されることになったのである。在宅医療の目標は,明らかにセカンドステージに入ったと言える。日本のどこでも在宅医療体制を可能にすることとその質が同時に問われ,専門職団体はガバナンスのみでなく責任が取れる体制を築く必要が生じてきた。これは良質な在宅医療がなければ,日本の医療は成り立たない時代になったことを意味する。こうした時代背景の中,2015年3月1日に「日本在宅ケアアライアンス(Japan Home Health Care Alliance;JHHCA)」が設立された。

 設立の基になったのが,第10回在宅医療推進フォーラム(2014年11月23日/主催=国立長寿医療研究センター,在宅医療助成勇美記念財団)にて採択された「在宅医療推進のための共同声明」である。この声明は,在宅医療にかかわる14の専門職団体が共同で発表したもので,その内容を以下に示したいと思う。

(1)市民とともに,地域に根ざしたコミュニティケアを実践する
(2)医療の原点を見据え,本来あるべき生活と人間の尊厳を大切にした医療を目指す
(3)保健・医療・介護・福祉専門職の協力と連携によるチームケアを追求する
(4)病院から在宅へ,切れ目のない医療提供体制を構築する
(5)療養者や家族の人生により添うことのできるスキルとマインドをもった,在宅医療を支える専門職を積極的に養成する
(6)日本に在宅医療を普及させるために協力する
(7)毎年11月23日を「在宅医療の日」とし,在宅医療をさらに推進するためのフォーラムを開催する

 今回設立したJHHCAはこの声明に賛同した,在宅医療の普及推進を目指す専門職団体で構成されており,15の加盟団体によってスタートした。

 さらに,JHHCAでは日本で在宅医療を普及推進させていくため,綱領(2015年2月25日採択,同年3月1日発効)において次の活動を行うことも定めている。

(1)地域包括ケアシステムの健全化のための方策を社会に提言する
(2)在宅医療における,医師会,歯科医師会,薬剤師会,看護協会等との連携強化のための方策を提言する
(3)地域包括ケアシステムに携わる専門職の連携強化のための方策を提言する
(4)地域包括ケアシステムの構築にかかわる行政との適切な連携のための方策を提言する
(5)地域診断に基づく各地域の実情に合った地域包括ケアシステムの在り方に対して提案する
(6)地域住民が在宅医療や在宅介護サービスを適切に利用できるように啓発活動をおこなう
(7)地域包括ケアシステム構築に携わる専門職の意識改革をはじめとした,教育への方策を提言する
(8)在宅医療を推進するための具体的方策や情報をメディアへ発信する
(9)その他の在宅医療普及推進する必要な方策を社会に提言する

 今後,在宅医療に対する需要はますます高まる見通しだ。良質な在宅医療体制を構築し,提供していくことは,日頃から在宅医療に携わる専門家団体の重大な責務と言える。JHHCAは今,日本が必要としている種々の地域包括ケアシステムに対して,結束して,その役割を果たしたいと思っている。


新田 國夫
1967年早大第一商学部卒。79年帝京大医学部卒。帝京大病院第一外科などを経て,90年新田クリニックを開設し在宅医療を開始。92年医療法人社団つくし会設立後理事長に就任し,現在に至る。全国在宅療養支援診療所連絡会会長,日本在宅ケアアライアンス議長など役職多数。

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