医学界新聞

2015.03.16



多職種連携で,集中治療の輪を広げる

第42回日本集中治療医学会学術集会開催


  第42回日本集中治療医学会学術集会(会長=東京医大・山科章氏)が,2月9-11日,ホテル日航東京(東京都港区)他にて開催された。「高めよう集中治療の力,広めよう集中治療の輪」をテーマに掲げた本学術集会では,集中治療に関する知識・技術の向上,多職種の協調,チーム医療に焦点を当てたプログラムが多く企画され,職種の垣根を越えた熱心な議論が交わされた。


山科章会長
 2014年11月,日本集中治療医学会,日本救急医学会,日本循環器学会は合同で「救急・集中治療における終末期医療に関するガイドライン――3学会からの提言」を公表した。同ガイドラインでは,救急・集中治療における終末期を「集中治療室等で治療されている急性重症患者に対し適切な治療を尽くしても救命の見込みがないと判断される時期」と定義。その判断を下す場合についても例示した。延命措置についての選択肢には(1)治療の維持,(2)減量,(3)終了,(4)上記(1)-(3)の条件付選択,などを示し,主治医以下複数の医師と看護師ら「医療チーム」の総意による判断と対応が重要とした。

 ガイドラインの使用は各施設に委ねられており,終末期の患者にどう向き合うか,集中治療の現場では今後も活発な議論が継続されるとみられる。ラウンドテーブル「集中治療における終末期医療“治療の最前線での末期医療を多角的に捉えなおす”」(座長=北大・丸藤哲氏)では,ガイドラインを踏まえ,多様な視点から終末期患者への介入について討論された。

集中治療における終末期とは

 まず丸藤氏が「終末期医療」の言葉や定義の変遷をたどり,その在り方を問うた。厚労省では2004年,検討会などに用いる名称を,末期がんや植物状態の患者のみを想定した「末期医療」から,より幅広い病態への多様なケアを議論すべく「終末期医療」へと変更。さらに昨年「終末期医療に関する意識調査等検討会報告書」にて「人生の最終段階における医療」への変更を提案し,個々人の生き様に着目したケアの必要性を示した。氏は,こうした定義が浸透する一方,DNAR(心肺蘇生を行わない事前指示)など患者の意思の尊重を志向するあまり,延命について十分検討されないケースがあるとの懸念を示した。

 続いて関根龍一氏(亀田総合病院)が急性期病院の緩和ケア医の視点で,ICUと緩和ケアの統合を論じた。氏は,疼痛管理の不十分さや患者・家族とのコミュニケーション不足,医療者の心理的葛藤など,ICUが抱える課題を列挙。緩和ケアの適切な介入がそれらを解決に導き,医療費の支出も抑制するとした。日本においては最期まで積極的治療を望む傾向が強いとも明かし,そうした文化的特徴も踏まえて,患者のQOLが最大限向上する緩和ケアの提供体制を整えるべきと提言。さらに事前指示書の普及など,国民に向けた啓蒙活動の必要性も訴えた。

 大石醒悟氏(兵庫県立姫路循環器病センター)は,循環器疾患では末期状態でも機器や移植で改善の可能性が見込めるため,終末期の判断が特に難しいと指摘。延命措置の選択も,前述の(1)が「限界」と考察した。また,質の高い終末期医療には,本人や家族への意思決定支援が必須と主張。急変時DNARの有無に拠らず,患者のQOL,家族の負担など複数の要素を考慮し,その時点...

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