MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内
2015.01.26
Medical Library 書評・新刊案内
公衆衛生実践キーワード
地域保健活動の今がわかる明日がみえる
鳩野 洋子,島田 美喜 編
《評 者》柳川 洋(自治医大名誉教授/埼玉県立大名誉教授)
公衆衛生実践者にとっての必読の参考書
最近,公衆衛生分野でも,さまざまな新しい言葉が使われるようになった。特にカタカナ言葉,例えば,ソーシャルキャピタル,ヘルスプロモーション,アドボカシー,エンパワメント,クリティカルパス,リスクコミュニケーション……など,枚挙にいとまがない。
中でも,このところよく話題になる「ソーシャルキャピタル」。これは古くから使われている言葉であるが,わが国の公衆衛生分野の人たちが使うようになったのは,つい最近のことである。ソーシャルキャピタルのような言葉は,一種の流行語的な特徴を持ち,多くの人が使ってはいるが,必ずしもその内容を正しく理解しているわけではない。カタカナ言葉は,適切な日本語訳が見つからないために,そのまま原文の発音をカタカナにしていることもあって,人によって少しずつ異なった意味で使われているようである。
鳩野洋子,島田美喜編集『公衆衛生実践キーワード――地域保健活動の今がわかる明日がみえる』は,この点をすっきりと解決する作品であると言っても過言ではない。全体を12領域に分けて,それぞれの領域の第一人者が,よく使われてはいるが正しく理解されていない言葉を精選し,それら各キーワードについて「定義・語義」「歴史・背景」「解説」をわかりやすく執筆し,その上,もっと知りたい人のための関連文献・資料のリストまで掲げている。
一つの言葉を,人によって異なった意味で理解していると,それが原因で誤解が生じたり,議論がかみ合わなくなったりする。この際,公衆衛生のキーワードをきちんと定義し,共通の認識に立って使ってもらう必要があると思う。その意味で,本書は,この問題を解決する画期的な好著であり,まさに公衆衛生実践者にとって,必読の参考書ということができる。
医学系,保健医療福祉系の大学,専門学校の教科書としても,ぜひお薦めしたい。学生はもとより,教師にとっても一度はきちんと,本書に取り上げられている言葉の正しい意味を理解してほしい。私自身も本書を読ませていただき,多くのことを学ぶことができた。特に一つひとつの言葉についての歴史・背景は大変参考になった。
編者らは,このような参考書...
この記事はログインすると全文を読むことができます。
医学書院IDをお持ちでない方は医学書院IDを取得(無料)ください。
いま話題の記事
-
医学界新聞プラス
[第1回]心エコーレポートの見方をざっくり教えてください
『循環器病棟の業務が全然わからないので、うし先生に聞いてみた。』より連載 2024.04.26
-
医学界新聞プラス
[第3回]冠動脈造影でLADとLCX の区別がつきません……
『医学界新聞プラス 循環器病棟の業務が全然わからないので、うし先生に聞いてみた。』より連載 2024.05.10
-
医学界新聞プラス
[第1回]ビタミンB1は救急外来でいつ,誰に,どれだけ投与するのか?
『救急外来,ここだけの話』より連載 2021.06.25
-
医学界新聞プラス
[第2回]アセトアミノフェン経口製剤(カロナールⓇ)は 空腹時に服薬することが可能か?
『医薬品情報のひきだし』より連載 2022.08.05
-
対談・座談会 2025.03.11
最新の記事
-
対談・座談会 2025.04.08
-
対談・座談会 2025.04.08
-
腹痛診療アップデート
「急性腹症診療ガイドライン2025」をひもとく対談・座談会 2025.04.08
-
野木真将氏に聞く
国際水準の医師育成をめざす認証評価
ACGME-I認証を取得した亀田総合病院の歩みインタビュー 2025.04.08
-
能登半島地震による被災者の口腔への影響と,地域で連携した「食べる」支援の継続
寄稿 2025.04.08
開く
医学書院IDの登録設定により、
更新通知をメールで受け取れます。