この先生に会いたい!! 得意で,好きで,人の役に立つこと。あとはその道を信じて進むだけ!(岡田正人,吉田常恭)
インタビュー
2014.11.03
【シリーズ】
この先生に会いたい!!得意で,好きで,人の役に立つこと。
あとはその道を信じて進むだけ!
岡田 正人氏
(聖路加国際病院 Immuno-Rheumatology Centerセンター長)
に聞く
<聞き手>吉田 常恭さん
(武蔵野赤十字病院 初期研修医)
医学部在学中に米国の臨床研修資格試験(FMGEMS)に合格し,卒後間もなく米国へ研修に行った岡田正人氏。当時日本人研修医がほとんどいなかったという米国に行くことをなぜ決意したのか,不安や迷いはなかったのか――。氏がこれまで医師として歩んできた道を,研修医の吉田常恭さんが聞いた。
吉田 先生は医学部在学中に米国の臨床研修資格試験に合格し,卒後間もなく米国へ研修に行かれたのですよね。医師としての非常に高い志を感じるのですが,いつから医師になろうと思ったのでしょうか。
岡田 それが意外にも,高校2年の終わりにたまたま何かのドラマを見ていて,「医師って人の役に立ててすごいな」と思ったのがきっかけです。そのときまで医師という職業があることにも気付いていなかったんですよ。本当に何も知らなかったので,医学部を受験してから6年制だと知って驚いたぐらいです。でも身内に医師でもいなければ,僕のように偶然めざす人も多いのではないでしょうか。
吉田 では,医学部に入学してからはどのように過ごされていたのですか。
岡田 真面目なほうだったと自分では思っています。バスケットボール部に入部して,スポーツも頑張っていました。でも大学3年のときに,「卒業したら米国で研修を受けよう」と決意したんです。キャプテンを任されていたときは米国留学のために勉強がしたかったので,練習の開始時刻を2時間遅らせて勉強に充てていました。部員たちからしたら迷惑な話ですよね(笑)。
吉田 米国を意識したきっかけはなんだったのでしょうか。
岡田 もともと免疫の勉強が好きだったので,将来はアレルギーや膠原病を専門にしたいと思っていたんです。
当時は9割以上の人が母校の附属病院で卒後研修をする時代だったのですが,母校にはアレルギー科がなかった。そもそも,そのころ日本の大学で膠原病をきちんと診ている病院は数か所しかなかったと思います。
そんなとき,米国で研修ができる制度があることを知ったんです。どうせなら一番いいところで研修したいと思い,米国に行くことを決めました。
とにかく勉強するしかなかった
吉田 私も米国留学には漠然とした憧れがあるのですが,なかなか踏み切る勇気がありません。不安はなかったのでしょうか。
岡田 あのころはインターネットなんてなくて,よくも悪くも情報が入ってこなかったぶん,不安もありませんでしたね。
実はベトナム戦争の後,米国は医師不足に陥って海外から研修医をたくさん受け入れていたのですが,80年代からは逆に医師過剰が言われるようになり,外国人医師の受け入れは減っていきました。僕が5年生のころは,日本人の研修医は米国全土でも数人しかいなかったんじゃないかな。
吉田 情報がない中,米国留学をめざしての勉強はどうしていましたか。
岡田 とりあえず英語の教科書だけを使って勉強していたのですが,『ハリソン内科学』の原書を最初から全部読むというような,かなり非効率的な方法でした。情報がないから,ひたすら勉強するしかなかったんです。それこそ,はげるくらい勉強しました(笑)。
吉田 全部読むというのはなかなか大変ですね。
岡田 教科書を1ページ目から読んでいくことは非常に大変です。むしろ医学は,勉強したことを実際の仕事にすぐに活かせる実学なので,自分が担当した患者さんに関連するところをその日のうちに確認するのがいい勉強になると思います。患者さんに提案できる選択肢を増やすためにも,最新の知見に触れることは欠かせないし,きちんと整理された知識を身につけておくことはとても大切です。
吉田 では,教科書を読む以外にされていたことはありますか。
岡田 僕は大学4年の冬から,『New England Journal of Medicine(NEJM)』誌を欠かさず読んでいました。NEJM誌の存在を偶然知って,面白そうだと思って購読してみたんです。全部読むのはすごく時間がかかって大変でしたが,とても勉強になりました。結局それからニューヨークでの3年間の研修が終わるまで,いつも持ち歩いて読み続けていました。
3か月も経てば,環境には慣れる
吉田 そうした苦労を経て,在学中に無事試験に合格されたのですね。卒後はどうされましたか。
岡田 本当は卒業したらすぐ米国へ行こうかと思っていたのですが,英語ができなかったので横須賀米海軍病院で1年研修をしてから行くことにしました。
吉田 私も英語には不安があって,それもなかなか留学に踏み出せない一因になっています。
岡田 僕は卒後を意識して,学生時代は夏休みなどを利用してロンドンやニューヨークに留学していました。ちょうどNHKの「やさしいビジネス英語(現・ビジネス英会話)」も始まったので,それを全部覚えて,CNNニュースも全て聞き取れるようにしたんです。でも,実際に海軍病院に行ってみたら全然わからなくて,結局1年間いてもあまり英語ができるようになった気はしませんでした。
吉田 それでは,実際に米国に渡ってからはいかがでしたか。
岡田 ニューヨークの人って早口なので,何を言っているのか全然聞き取れないんですよ。でも,米国には外国人の患者さんがたくさんいて,英語が苦手な人やしゃべれない人も多かったので,自分が話せなくてもあまり気にならなかったのは良かったかもしれません(笑)。本当に困ったのは最初の3か月ぐらいかな。3か月も英語の環境で過ごしていると,自然と何とかなっていきました。もちろん,行く前にできることはしておいたほうがいいとは思いますけどね。
海外でしか学べないこともある
吉田 もう少しで後期研修が始まるということもあり,どのタイミングで留学するのがいいのか迷っています。
岡田 いつ行ってもいいんですよ。
吉田 留学へ行くとまた最初から学び始めなければいけないので,行くのが遅くなるほどロスも大きくなってしまうのではないかという不安もあるのですが。
岡田 最初から始めなくてはいけないと言っても,日本と米国で学べることは全く違うので,完全に振り出しに戻るというわけではないです。日本でしか学べないことも当然あるので,日本にいる間は日本でできることを一生懸命学んで,それから海外の違うやり方を学ぶのは非常にいい経験になります。
「いいとこ取りなんかできない」と言う人もいますが,全てをまねることは無理でも,海外から学べる部分はたくさんありますよ。それを知るには,やはり実際に経験してみないといけない。この先も医師としてやっていくなら無駄になる経験ってないと思うので,早くても遅くても,その経験が回り道になることはありません。
教育にお金をかけていて,指導医もたくさんいる米国ならではの経験もありますからね。
吉田 米国でしか学べないことはなんでしょうか。
岡田 プレゼンテーションを繰り返すことで,自分が今わかっていること,なぜそう考...
この記事はログインすると全文を読むことができます。
医学書院IDをお持ちでない方は医学書院IDを取得(無料)ください。
いま話題の記事
-
医学界新聞プラス
[第1回]心エコーレポートの見方をざっくり教えてください
『循環器病棟の業務が全然わからないので、うし先生に聞いてみた。』より連載 2024.04.26
-
医学界新聞プラス
[第3回]冠動脈造影でLADとLCX の区別がつきません……
『医学界新聞プラス 循環器病棟の業務が全然わからないので、うし先生に聞いてみた。』より連載 2024.05.10
-
医学界新聞プラス
[第1回]ビタミンB1は救急外来でいつ,誰に,どれだけ投与するのか?
『救急外来,ここだけの話』より連載 2021.06.25
-
医学界新聞プラス
[第2回]アセトアミノフェン経口製剤(カロナールⓇ)は 空腹時に服薬することが可能か?
『医薬品情報のひきだし』より連載 2022.08.05
-
対談・座談会 2025.03.11
最新の記事
-
対談・座談会 2025.04.08
-
対談・座談会 2025.04.08
-
腹痛診療アップデート
「急性腹症診療ガイドライン2025」をひもとく対談・座談会 2025.04.08
-
野木真将氏に聞く
国際水準の医師育成をめざす認証評価
ACGME-I認証を取得した亀田総合病院の歩みインタビュー 2025.04.08
-
能登半島地震による被災者の口腔への影響と,地域で連携した「食べる」支援の継続
寄稿 2025.04.08
開く
医学書院IDの登録設定により、
更新通知をメールで受け取れます。