医学界新聞

寄稿

2014.10.13



【寄稿】

英国の修士課程で緩和ケアを学んで

大石 愛(エディンバラ大学人口健康科学センター Primary Palliative Care Research Group 博士課程)


 私は,家庭医療,緩和ケア,在宅医療の研修を経て,ロンドンのKing’s College Londonへ約1年間留学し,Master of Science in Palliative Care(緩和ケア修士号)を取得した。今回はよく尋ねられる留学準備とカリキュラムのことを中心にまとめたいと思う。

当初は現実味のなかった修士課程への留学

 英国に緩和ケア修士課程が存在することを知ったのは,地域緩和ケアの短期研修のために英国シェフィールドを訪問したときのことであった。

 同時期に英国で修士課程を修了した先輩が,英国にはさまざまな修士課程が存在することや準備の進め方についてこまごまと教えてくれた。正直,当時の私にとってはそこまで現実味のある話ではなかったが,準備をする過程そのものがためになるかもしれないと思い,下調べを始めてみることにした。

 まず,ヨーロッパの修士コースを検索できるFindAMastersなどのインターネット検索を利用して自分に合うコースを探し始めた。最初は何となく眺めていただけだったが,具体的に調べていくと自分にとって大事な条件が徐々にわかってくるようになった。私の場合は,非がん疾患の緩和ケアや,地域全体の緩和ケア・組織運営についても学ぶ機会があること,できれば小児緩和ケアについても学ぶ機会があることが重要な条件となった。そして最終的に残ったのはCardiff UniversityとKing’s College Londonであった。

 Cardiffのコースは,世界的にも知名度の高い緩和ケアの通信制修士課程であり,修士号を取得するには3年間学ぶ必要がある。小児緩和ケアのモジュールを重点的に取ることで「小児緩和ケア修士」を取ることもできる。このコースでは,臨床の場で出合ったケースを基に課題に取り組むため,実践と学問的知識をつなげるには最適の方法と思えた。

 一方,King’s College Londonの緩和ケア修士コースは,1年間のフルタイムか2年間のパートタイムを選択できる。いずれも,2週間の集中科目を計6回受講する必要がある。時間や費用の点から,私は1年間のフルタイムで受講することを念頭に置いたが,台湾からパートタイムで参加している医師もいたので,働きながら2年間でのコース受講も不可能ではない。

 この2校については,コース担当者に連絡を取り,在籍している学生のバックグラウンドや,修了率なども確認した。どちらも魅力的で大変迷ったが,英国で生活しながら学ぶことで得られるものも大きいと思ったこと,現代ホスピス運動発祥の地と言われるSt Christopher’s Hospiceで学ぶ機会があることに魅力を感じて最終的にはKing’s College Londonを選んだ。

 英国の大学院に入学するには,IELTS,TOEFL,ケンブリッジ英検のいずれかで,基準スコアへの到達が条件になることが多い。最初から英国への留学がわかっている場合には,IELTSの受験をお勧めする。私は,英語学校のIELTS対策コースや英国大学院留学専門の準備学校に通うことにしたが,さまざまな背景を持つクラスメートと共に学ぶことができたのは大きな収穫だった。

 出願の際には,英語のスコアの他に,personal statement(約500単語)や推薦状(1-2通),大学の成績証明書などを提出する必要がある。該当する資格の証明書の提出が必要となる場合もあり,私は医師免許証の英訳を提出した。ほとんどの大学は書類選考で合否が決まるが,King’sは書...

この記事はログインすると全文を読むことができます。
医学書院IDをお持ちでない方は医学書院IDを取得(無料)ください。

開く

医学書院IDの登録設定により、
更新通知をメールで受け取れます。

医学界新聞公式SNS

  • Facebook