医学界新聞

寄稿

2014.09.01



【FAQ】

患者や医療者のFAQ(Frequently Asked Questions;頻繁に尋ねられる質問)に,その領域のエキスパートが答えます。

今回のテーマ
ベンゾジアゼピン系薬の使い方・減薬の仕方

【今回の回答者】稲田 健(東京女子医科大学医学部精神医学講座・講師)


 近年,出血性脳卒中は増加傾向にあり,その背景に抗凝固薬・抗血小板薬の処方増が指摘されています。新規薬剤が加わり選択肢の増えた抗血栓薬を正しく使い分け,出血を回避しつつ脳梗塞の再発を防ぐことが大切です。


 ベンゾジアゼピン(BZ)系薬は,睡眠薬や抗不安薬として幅広い診療科で使用される薬剤です。高い有効性と安全性を有しますが,過鎮静やふらつき,長期使用では依存性などの副作用が問題となります。適切な使用方法を理解し,患者さんに伝えることが重要です。

■FAQ1

そもそも,BZ系薬とは何ですか? 「非BZ系睡眠薬」とは別のものと考えてよいのでしょうか。

 BZ系薬とは,γアミノ酪酸(GABA)/BZ受容体/クロールイオンチャネル複合体に作用する薬剤であり,抗不安薬,睡眠薬,抗てんかん薬などに分類されています。古典的には化学構造式としてBZ骨格を有しますが,BZ骨格でないもの,例えばエチゾラムやゾルピデムなどもあります。化学構造式が異なっていても作用機序,効果,副作用は同様であり,これらをまとめてBZ系薬あるいはBZ受容体作動薬と呼びます。BZ系薬の作用機序は,GABA-BZ-受容体複合体のアロステリック調節です。GABA神経系を直接変化させるものではなく,一定用量で作用は頭打ちとなります。

Answer…GABA-BZ-受容体に作用する薬剤であり,作用も副作用も共通している。非BZ系睡眠薬と呼ばれるものも作用機序は同じで,問題点も同様と考えるべきである。

■FAQ2

長期,あるいは多めに服用していても,安定しているのであればよいと思うのですが……。

 BZ系薬は高い安全性を有する薬剤ですが,に示すような副作用を有します。これらの副作用は低用量で短期間の使用であれば目立ちません。しかし多剤併用や高用量使用,長期使用になると問題が顕在化することがあります。多くの事故は複数の要因が重畳した際に発生するものであり,BZ系薬がその要因の一つとなり得ることに留意すべきです。例えば「持ち越し効果」は,前日に服用した睡眠薬の効果が翌日まで持続してしまうことです。生体の薬物代謝能力は加齢や体調,併用薬剤の使用状況などによって変化します。加齢によって代謝能が低下したところに,代謝を阻害する薬剤を併用するようになると,身体的疲弊状態にあった場合,持ち越し効果が強く生じることがあります。結果として日中の眠気や集中力の低下を生じ,交通事故の要因となり得ます。

 BZ系薬の副作用とリスク因子
(1)持ち越し効果(翌日の眠気,集中困難)
  リスク因子:長時間作用型薬剤,代謝の低下した患者
(2)健忘,奇異反応,せん妄,脱抑制(内服後の前向性健忘)
  リスク因子:高齢者,脳損傷のある患者
(3)筋弛緩作用や反射抑制によるふらつき・転倒
  リスク因子:高齢者
(4)依存性(離脱症状による身体依存中心)
  リスク因子:長期使用,多剤併用

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