医学界新聞

2014.08.04



ACC/AHAガイドラインと脂質管理


 ACC/AHAは,動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)のリスクを減少させるための脂質異常症治療に関するガイドラインを2013年11月に発表した。第46回日本動脈硬化学会(会長=自治医大・永井良三氏,2014年7月10-11日,東京都新宿区)の特別企画「脂質管理のあるべき姿とは――ACC/AHAガイドラインの改訂を受けて」(座長=日医大・及川眞一氏,国際医療福祉大大学院・佐々木淳氏)では,従来の管理基準から大きく刷新された当該ガイドラインについて論議が行われた。

脂質管理目標値を設定しないのは妥当か?

 初めに,座長の佐々木氏がACC/AHA ガイドラインを概説した。あらかじめ設定した質問に答える形で構成されており,その骨子は以下のとおり。

1)スタチンは一次/二次予防においてASCVDの発症リスクを有意に減少させる。
2)スタチン以外の薬剤によるリスク低下のエビデンスはない。
3)LDL-Cやnon-HDL-Cの治療目標値を設定できるようなエビデンスはない。

 さらに同ガイドラインでは,スタチン治療が有益とされる集団を同定。(1)ASCVDを有する患者,(2)LDL-Cが190 mg/dL以上の患者,(3)LDL-Cが70-189 mg/dLの糖尿病患者(40-75歳),(4)LDL-Cが70-189 mg/dLでASCVD10年リスクが7.5%以上の非糖尿病患者(40-75歳)のいずれかに当てはまれば,スタチン治療を推奨している。

 また,3)を踏まえて脂質管理目標値を設定していないのも特徴だ。これに対して佐々木氏は「ACC/AHAガイドラインに対する日本動脈硬化学会の見解」(学会HPに掲載)を紹介。「管理目標値を設定できるようなエビデンスがないという指摘に異論はない」とする一方,実臨床においては管理目標値があったほうが治療しやすいことから,「本邦の動脈硬化性疾患予防ガイドラインにおいては管理目標値を維持することが望ましい」と述べた。

 三浦克之氏(滋賀医大)は,前述のASCVD10年リスクは米国のコホート研究を統合したデータを用いて作成されており,非ヒスパニック白人およびアフリカ系アメリカ人が対象であると解説した。さらにはASCVD発症イベントについて,米国は心筋梗塞優位だが,日本では脳卒中優位であることを指摘。ただし時代とともに日本の疾病構造も変化していることから,疫学的見地を踏まえ,日本に適した治療適用基準の作成が必要との見解を示した。

 今回のACC/AHAガイドラインは,RCTやメタ解析によって有用性が証明されたエビデンスのみを採用しており,脂質管理目標値の設定,75歳以上の患者の推奨治療などは見送られた形だ。日本動脈硬化学会では,国内の状況も加味した次期ガイドライン改訂に着手しており,新たなエビデンスの構築が待たれる。