医学界新聞

2014.06.23

スキンテアのケア指針策定をめざす


南由起子会長
 第23回日本創傷・オストミー・失禁管理学会(会長=サンシティ銀座EAST・南由起子氏)が5月16-17日,大宮ソニックシティ(さいたま市)にて開催された。同学会では2012年度から,海外でも注目される「スキンテア(Skin tear)」についてのケア指針策定に向けた学術教育委員会(オストミー・スキンケア担当,委員長=金沢医大・紺家千津子氏)による全国規模での実態調査を計画。今学会では,その事前調査の結果を基に,コンセンサスシンポジウム(座長=東大大学院・真田弘美氏,日看協・溝上祐子氏)が企画された。

日本におけるスキンテアの実態調査を実施

 スキンテアとは,「主として高齢者の四肢に発症する外傷性創傷であり,摩擦単独あるいは摩擦・ずれによって,表皮が真皮から分離(部分層創傷),または表皮および真皮が下層構造から分離(全層創傷)して生じる」()創傷を指す。この創傷は「テープ剥離時に皮膚も剥がれた」「ベッド柵に腕が擦れ,皮膚が裂けた」といった日常のケアや生活の中で起こり得るものの,医療者間でもそれらが「スキンテアである」という認識に乏しく,発症理由・予防法も共有されていない。そのため,現場では,ともすれば「医療者から虐待を受けているのでは」と患者家族から誤解を受けるような事態も起きてきたという。

 今回,同学会では,日本におけるスキンテアの現状を把握するため,11施設で事前調査を実施。オーストラリアで活用されている創のアセスメントツール「STARスキンテア分類」に準じて調査に当たった。その結果,対象者6173人のうちスキンテアがあったのは42人で,粗有病率0.68%と報告。施設や診療科,患者の年齢などの違いについて多変量解析により交絡を補正したところ,(1)患者年齢75歳以上では有病率が高くなり,年齢が大きな要因であると示唆された,(2)診療科別で見るとICU,内科系,外科系の順で発症傾向が高まった,(3)事前に医療者へのスキンテア教育が行われていた施設では有病率が低下したなどの結果が得られたという。座長を務めた同学会理事長の真田氏は「有病率0.68%という結果は低いと思われるかもしれない。しかし平均年齢85歳の施設では有病率が3.8%という先行研究もあり,超高齢社会においては高齢者のスキンテアは課題。今回の結果から,急性期の現場では高齢患者の肌を守るために一層の努力が必要と再認識した」と見解を述べた。

 今後同学会では,全国規模での実態調査を進めるとともに,医療者・国民への周知を図りたい考えだ。なお,これまでスキンテアと呼んできたものは,「スキンケア」との混同を避けるため,「テア」と名称を統一する見通しだ。

日本語版STARスキンテア分類システム

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