医学界新聞

2014.05.19

心房細動治療の最新動向


井上博氏
 2014年1月,日本循環器学会が5年ぶりに「心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013年改訂版)」を発表した1)。新ガイドラインでは,新規経口抗凝固薬4剤が追加されたほか,ワルファリン療法時のPT-INR測定の推奨レベルを上げるなど,より日本人の臨床データに基づいた改訂がなされた。本紙では,第111回日本内科学会(会長=東北大・伊藤貞嘉氏,2014年4月11-13日,東京国際フォーラム)において同ガイドラインの合同研究班班長である井上博氏(富山大)が行った講演「心房細動の管理:進歩と課題」の模様を報告する。

高齢化社会の進行とともに増加する心房細動の治療の在り方

 心房細動の管理は(1)不整脈の管理,(2)基礎疾患・誘因への対応,(3)塞栓症リスク評価の3本の柱から成る。

 (1)不整脈の管理は,主に心拍数調節(レート治療)と洞調律化(リズム治療)に分けられる。井上氏は,薬剤を用いるレート治療とリズム治療では心・血管イベントの発生率に差が見られず,発作性心房細動治療の忍容性という観点においてのみリズム治療が勝ると報告。また,持続性心房細動に対しては抗不整脈薬による治療では抑制効果に限界があるとの見解を示した。一方で,80%を超す根治率が得られるカテーテル・アブレーションに関しても侵襲的治療である,合併症があるなどの課題を挙げ,長期予後に関して薬物治療との比較検証が必要と結論付けた。

 (2)基礎疾患・誘因への対応としては,心房細動の誘因となる高血圧や虚血といった病態そのものへの予防的治療(Upstream治療)が国内外で注目されてきた。その中でもレニン・アンジオテンシン系阻害薬の効果が期待されたが,欧米と日本それぞれで行われた臨床試験ではともに心房細動抑制効果は認められなかったと報告した。

 (3)塞栓症のリスク評価に関しては,氏は日本における前向き観察研究(J-RHYTHM Registry)の......

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