医学界新聞

寄稿

2014.03.10

【視点】

ジェネラリストの多様性を尊重しつつ共通するコアを緩く共有していきたい

木村 琢磨(ジェネラリストのこれからを考える会代表/北里大学医学部総合診療医学准教授・地域総合医療学特任准教授)


これでいいんだ,と再確認できる場

 2008年,地域医療・家庭医療・総合診療などさまざまな立場でジェネラリストを志向してきた卒後10年前後の医師たちが「知識・スキルを結集して何かしたい」という思いで全国各地から集まった。小泉俊三先生(東光会七条診療所所長)の支援のもと,コアメンバーにより結成されたのが「ジェネラリストのこれからを考える会」(Generalist Proactivators for Evolving Perspectives;GPEP)であり,2014年1月の名古屋医療センターまで,各地で計10回のワークショップを開催してきた。

 ワークショップでは原則,各地域で活躍するジェネラリストによる基調講演に加え,ジェネラリストならではの症例へのアプローチ,求められるスキルややりがいなどを自由にディスカッションする形式をとった。多様な経歴を経て現在はジェネラリストとして活動する医師や,医師以外の多職種も参加し毎回盛会となる様子を見て,ワークショップという手法の効果を実感させられた。ある参加者は「GPEPでは,いろいろな世代・地域・立場のジェネラリストがなんとなく同じ方向を向いていて,同じような悩みがあることを知った。やりがいを感じたり,喜びを覚えたり,これでいいんだなぁと再確認できる場であり,また明日からがんばる元気をもらえた」という感想を寄せたが,主催者側のGPEPメンバーにとっても,日々の活力を充填できる場であった。

ジェネラリストのこれからと,GPEPのこれから

 ジェネラリストを取り巻く状況は,医療・社会の情勢によって大きく変わる。総合診療専門医の誕生が決定した影響は大きく,ジェネラリストを志向する者にとって今ほど希望に満ち溢れた時代はないと言えよう。「ジェネラリストのこれから」を新たに考えるべき時代になりつつあると実感した今,「GPEPのこれから」もあらためて考える必要があると判断し,われわれはこのたびワークショップ形式の活動に一区切りをつけることとした。

 GPEPの活動を通して学んだのは,全国には実にさまざまな表現形で,ジェネラリストとして黙々と活動する医師が数多くいるという事実である。この多様性を尊重することが,日本の医療におけるジェネラリストの在り方を考える上で重要だと実感した。また,一見異なる立場で違う活動を行っていても,直接話すとジェネラリストとして共通のコアを持っていると感じることも多く,それを言語化し"緩く"共有することの必要性も強く感じている。それが,ヘテロ集団と言えるジェネラリストが協調する鍵であろう。

 GPEPの今後の活動内容は白紙だが,日本的ジェネラリストがほどよいヘテロ集団のまま発展できるよう,総合診療専門医制度誕生後も「多様性を尊重しつつ共通のコアを緩く共有する」活動ができないかと考えている。いわば「ジェネラリストのこれからを新たに考える会」として,より若い世代へ引き継ぎ,新たな一歩を踏み出すことを模索している。

 既に一部の参加者から「ジェネラリストの普遍性を大切にしながら,ゆっくり話せる場を作りたい」という意向も聞いている。今後の活動にご興味のある方は,事務局(m-kitamura@clin.medic.mie-u.ac.jp;メールを送る際,@は小文字にしてご記入ください)までご連絡ください。


木村 琢磨
1997年東邦大医学部卒。国立東京第二病院,国立病院機構東京医療センター総合診療科,国立病院機構東埼玉病院,三重県立一志病院などを経て2014年より現職。

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