LGBTと医療(清水真央)
寄稿
2014.02.24
【寄稿】
LGBTと医療
誰にとっても他人事じゃない,性と生のはなし
清水 真央(群馬大学医学部医学科5年)
この上なく私事ではございますが,先日,結婚式を挙げました。ウエディングドレスを着てのお式です。ただでさえ歩きにくいものなのに,ふたりともドレスだと移動のときにやっぱり気を使いますね。
――はい。今,皆さんが想像していたものと異なる情景が描出されたのではないでしょうか。私は女性です。先日結婚式を挙げたその相手も女性です。ふたりとも,女性だけを好きになる女性です。レズビアンの書く文章を読むのは初めてですか? レズビアンを名乗る人の文章を読むのは,初めてかもしれませんね。
「LGBT」という言葉があります。L=レズビアン(女性を好きになる女性),G=ゲイ(男性を好きになる男性),B=バイセクシュアル(男性も女性も好きになり得る人),T=トランスジェンダー(社会的・身体的に割り当てられた性別に違和感を持つ人)の頭文字をとった言葉で,典型的でないとされる性の在り方をする人たちを指します。なお,その人々を総称する言葉の選び方については日夜議論が絶えず,LGBTという単語を使うことの是非を問う声もあります。しかし,紙面の都合と,通りの良さを考慮しまして,この記事ではLGBTという表記を用います。ご了承ください。
LGBTは,あなたの隣にも
電通総研が日本人約7万人を対象に行った調査(2012年)では,5.2%がLGBTだという結果が出ています1)。20人いれば,1人はLGBTだということです。あなたは今まで,何人の人と会ってきましたか。何人の方の話を聞き,何人の方の書く文章を読んできたのでしょうか。レズビアンなんて初めてだ,と思ったあなた。あなたの出会った初めてのLGBTは,きっと私ではないと思います。ただ知らなかっただけで,家族の誰かや親友が,実はそうかもしれません。LGBTは当たり前に,あなたの隣にいるのです。当然のことながら,あなたがかかわる患者さんの中にだっているでしょう。
あまり知られていないことですが,LGBTの人たちはしばしば医療や病院に対して居心地の悪さを感じています。突然そう言われても,ピンときませんよね。ちょっと具体例を挙げながら考えてみましょう。
嗤われるのも,びっくりされるのも……
どうしてすぐ隣にいるはずのLGBTになかなか気付かないかといえば,多くのLGBTは自分がそうであることを語らずに暮らしているからです。日常のさまざまな場面で,LGBTであることで差別されたり,好奇の目にさらされたりした経験をもつ方も少なくありません。
医療の現場だって,その例外ではないのです。LGBTであると告げたら,診療には関係のない性生活や身体のことについて根掘り葉掘り聞かれたり,心ない噂話をされたり。もちろん,そんな医療従事者ばかりではないのですが。そのことを伝えなくたって,「○○先生ってちょっとオネエっぽいよね」なんて医療従事者同士のおしゃべりが耳に飛び込んで来たら,それだけでぎくりとしてしまいます。LGBTであることでどんな扱いを受けるかわからないと感じた当事者は,間違ってもそのことがバレてはいけない,と悲愴な決意を新たにすることになるでしょう。
患者にLGBTであることを告げられて,興味本位の気持ちや悪意なしにただ,びっくりしてしまうこともあると思います。しかしLGBT当事者としては驚かれるのも申し訳なく,気が引けてしまいます。そもそもどうしてLGBTだと知らされてびっくりするのか。それはLGBTについてよく知らず,すぐそばにいるものと思っていないからです。
ここまで読んで,どうしてLGBTであることを医療の現場で知らせなくてはいけないのか,という疑問が湧いてきた方,いらっしゃいますか。それはご...
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