医学界新聞

寄稿

2013.12.02

【寄稿】

プロフェッショナリズム教育における評価ツールの活用
P-MEXを用いた経時的評価の方法について

高橋 理(聖路加国際病院一般内科/公益財団法人聖ルカ・ライフサイエンス研究所臨床疫学センター長)


プロフェッショナリズム教育の必要性とその評価法

 プロフェッショナリズムは医学教育の中で最も重要なトピックの一つである。米国の卒後医学教育認可機関 Accreditation Council for Graduate Medical Education(ACGME)は医師の身に着けるべき6つの能力を提示し,その中の1つにプロフェッショナリズムを挙げている。日本においてもプロフェッショナリズム教育への関心が高まっており,卒前・卒後を通して教育が行われる必要がある。医師のプロフェッショナリズム教育は医師-患者関係のみならず,患者アウトカム改善,医療の質向上,患者安全推進の観点からも重要であり,いつどのように教育するべきかの方向性を決めることが喫緊の課題である。

 そこで,プロフェッショナリズムを教育するためには,その定義と目的を明確にし,妥当性・信頼性の高い評価ツールを用いて継続的に測定し,その効果の確認が必要である。文献レビューによると,評価ツールはさまざまな国で開発され,利用目的によりいくつかのカテゴリーに分けられる。例えば,評価目的は認知レベルなのか,行動レベルかなどを明確にして利用するべきである(1)。また,プロフェッショナリズムの多層構造(個人レベル,個人間レベル,組織レベル)や文化的背景で異なることを考慮して評価ツールを選択するべきである。そこで,本稿では,日本国内でも妥当性・信頼性が示された日本語版Professionalism Mini-Evaluation Exercise(以下,P-MEX)の継続的活用法やその注意点を述べる。

 ミラーのピラミッドモデル3)とプロフェッショナリズム評価ツール
P-MEX:Professionalism Mini-Evaluation Exercise
OSCE:Objective Structured Clinical Examination,客観的臨床能力試験
SPs:Simulated Patients,模擬患者

経時的に,チーム全員で360度評価を行う

 P-MEXはカナダのMcGill大学でRichard Cruessらによって開発された医師のプロフェッショナリズム評価ツールである。「医師患者間関係能力」「省察能力」「時間管理能力」「医療者間関係能力」からなる4つの領域で評価される。カナダをはじめ数か国で妥当性,信頼性が証明され,わが国においても,Tsugawaら2)により,日本国内の7つの施設の前期研修医および専門研修医の評価において有用性が示されている。日本語版P-MEXは4領域23問からなり,各質問を5段階(0点:評価不能,1点:不適切,2点:期待以下,3点:ほぼ期待通り,4点:期待を超えてとてもよい)で評価し平均を計算することでプロフェッショナリズムを評価することが可能である。

 これまでも,医師のプロフェッショナリズム教育のためには,経時的に評価し,フィードバックを行うべきであるとされてきたが,評価ツールを用いた継続的な測定による変化と,その有用性について検討された例はあまりない。そこでわれわれは,内科専門研修医の医師のプロフェッショナリズムの経時的変化をP-MEXを用いて測定し,その変化と変化に影響を与える因子を検討した。

 研究デザインは,後ろ向きコホート研究。対象は,2009年より当院で2年以上研修した内科専門研修医。P-MEXの評価方法は,指導医・同僚・後輩医師・看護師から各2人以上が評価する360度評価を採用した。一般的に指導医からの評価は,過大または過小に評価され,バイアスがかかりやすいと言われている。指導医が研修医のすべての面を観察できるわけではないため,医療チームの全員が評価することが重要である。同僚は被評価者と同じ経験年数とし,後輩医師は...

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