“身体の使い方”を知り,腰痛のない身体介助を(岡田慎一郎)
インタビュー
2013.09.23
【interview】
"身体の使い方"を知り,腰痛のない身体介助を
岡田 慎一郎氏(理学療法士/介護福祉士/介護支援専門員)に聞く
腰痛を持つ人が全国で2800万人いるという調査結果を受け,厚労省では「職場における腰痛予防対策指針」の改定を進めている。そうしたなか,「身体介助で起きる腰痛を避けたい」という現場の声に応えるのが理学療法士の岡田慎一郎氏だ。腰痛を起こさず身体介助を実践するために必要な"身体の使い方"とは何か,岡田氏に話を聞いた。
「職業病」意識からの脱却を
―― 看護・介護を問わず,身体介助を行う現場においては,介助者の腰痛がかねてから問題視されています。
岡田 さまざまな調査でも腰痛を持つ方の多さが報告されていますよね。実際,僕の周囲を見回しても腰痛持ちの方は本当に多くて,「現場では身体介助を行う以上,腰痛になって当たり前」「職業病」という声すらあります。
でも,「身体介助は身体を痛める」という考えにとらわれてしまうのはすごくもったいない。むしろプロとして,常にベストコンディションで臨めるような工夫を探っていくべきではないかと思うのです。
―― 具体的にはどんな工夫ができるでしょうか。
岡田 自分自身の"身体の使い方"という,身体介助の基本の部分を見直すことが大切だと考えています。
―― "基本"とは,基礎的な"技術"ではなく,身体の使い方なのですね。
岡田 そうです。「基本」というとどうしても技術面に目が向きがちですが,本当に基本となるものは身体の使い方だと思うのです。各種のスポーツにおいて,技能や技術の習得のベースとなる身体の使い方が重視されるのと同様かもしれません。
実際のところ,医療職の方々は,自分自身の身体の動きに対する視点が抜け落ちていることが少なくない。解剖学や病態生理学など,身体に関する専門知識を持ち,対象者を注意深くみることができるにもかかわらず,自分自身の身体の使い方には驚くほど無関心だったりするんです。
そのため,身体介助の場面で力任せに行ってしまう。そうした一つひとつの負担が1年,2年と継続的に積み重なることで,結果として腰痛をはじめとした身体の故障につながってしまうのだと思います。
原則を知って,身体の動きを引き出す
―― でも,「身体の使い方」は,今からでも身につくものなのでしょうか。運動が苦手な方は身構えてしまうような気もします。
岡田 いわゆる"運動神経がいい"方のほうが,多少は勘をつかみやすいのかもしれませんね。でも,学校の体育の成績が「2」だった僕ですら,一応は身についていますよ(笑)。
身体の使い方の原則さえ学べば,身体に負担のかからない合理的な動きは実践できると思います。
――
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