医学界新聞

2013.09.09

日米両国の医学医療の発展を願って

日米医学医療交流財団25周年記念会開催


日野原氏(左)と赤津氏(右)
 日米医学医療交流財団(会長=清水一功氏,理事長=伴信太郎氏)が25周年を迎えたことを受け,7月20日,国際文化会館(東京都港区)にて記念会が開催された。式典では前理事長の宮坂勝之氏が同財団のこれまでの歩みを振り返り,25年間で710人の医療関係者に米国留学への助成を行ってきた功績を披露。今後は,来る少子高齢社会に向けて日本の医療システムや医学教育の改革,医療産業の促進に貢献していくべきと抱負を語った。

米国の医療から知る,日本の医療の長所と課題

 記念講演では,財団発起人の一人である日野原重明氏(聖路加国際メディカルセンター理事長)が登壇。自身の人生における米国医療との出会いについて語った。氏は戦前より米国式の医療に触れており,オスラー医師の著書とは終戦後まもない米国陸軍の医学図書館で出会ったという。39歳で米国エモリー大に留学した際には,「ベッドサイドティーチングで若い臨床医を育てる」等の米国流の医学教育を学び,以降,心身医学やPOSをはじめとする米国の先進医療を率先して日本に導入してきたと振り返った。最後に氏は,日本の医療における今後の課題として,(1)学術分野としての老年医学の確立,(2)医学教育・看護教育の革新,(3)プライマリ・ケアをはじめとする医療システムの整備を挙げ,日米双方の医療の発展を願った。

 続いて登壇した赤津晴子氏(米スタンフォード大)は,20年間に及ぶ米国での臨床医活動からみた日米それぞれの“良さ”について論じた。まず日本の良さとして「普通に生活していればほぼ正常体重を維持できる」点を挙げた氏は,「通常の生活で肥満になる」米国社会の深刻さを報告。2010年の調査によると,BMI30以上の国民が全人口に占める割合が,日本の4%に対して米国では36%,およそ3人に1人による。高すぎるBMIは虚血性心疾患等のリスクを上げて死亡率を高めるほか,BMIの増加とがん発症率との相関も示されていることから,米国における肥満対策は急務と氏は主張した。その一方で,日本にはない米国の良さとして「医療の安全性と質を守る医療システム」を紹介。特に米国における“チーム医療”は,各職種の業務分担が進み事故防止やアウトカム向上をもたらすだけでなく,日々増大する医療知識の教え合いや,透明性のある医療を可能にするピアレビューとしても機能しているという。また,米国では仕事とプライベートを明確に区別できる点にも触れ,医療者に無理のない環境の整備が医療の質向上につながるとの見解を示し,日本への導入に期待を寄せた。

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