医学界新聞

2013.06.17

第48回日本理学療法学術大会開催


鈴木重行大会長
 第48回日本理学療法学術大会が5月24-26日,鈴木重行大会長(名大大学院)のもと,「グローバル・スタンダード」をテーマに,名古屋国際会議場(愛知県名古屋市)にて開催された。理学療法士がかかわる疾患・領域が年々広がりをみせるなか,本大会では,これまで大きく取り上げられてこなかった糖尿病をテーマにした演題が組まれ,参加者の関心を集めた。

糖尿病治療への積極的なかかわりを求める

 2007年に行われた国民健康・栄養調査では「糖尿病が強く疑われる人」「糖尿病の可能性を否定できない人」が2210万人に上ると推定され,さらに最近の調査では,糖尿病患者における脳血管障害や腎臓病との合併の多さが報告されるなど,糖尿病対策は喫緊の課題となっている。糖尿病治療は,食事療法,運動療法,薬物療法の3つが柱になることから,多職種協働が必須であり,2001年には他職種の専門性を生かして患者に適切な自己管理を指導することを目的に日本糖尿病療養指導士(CDEJ)が誕生した。理学療法士には運動療法への参加が期待されているものの,CDEJの認定を受けた理学療法士は708人(2012年6月時点)と,全認定者数1万7066人のわずか4%にとどまっているのが現状だ。糖尿病患者への理学療法は診療報酬を算定できないこと,現行の「理学療法士及びおよび作業療法士法」ではその対象が「身体に障害のある者」となっていること,スタッフ・設備などの体制が整わないことなどが,糖尿病治療への参加が進まない要因とされる。

 こうしたなか,パネルディスカッション「医学会から見る代謝理学療法の未来と理学療法士への期待」(座長=順大東京江東高齢者医療センター・小沼富男氏,健康科学大・石黒友康氏)では,日本糖尿病学会,日本リハビリテーション医学会から田村好史氏(順大大学院),植木彬夫氏(東医大),上月正博氏(東北大大学院)の3人の医師が登壇。糖尿病治療における運動療法のエビデンスや,近年注目されている透析実施中の運動療法など最新の知見を紹介し,患者の生活指導に習熟した人材の多い理学療法士が糖尿病治療に参画する意義を述べた。さらに,今後理学療法士のかかわりが増えることを前提にした上で,薬物療法や,運動療法に際しての低血糖・高血糖対策など,糖尿病についてより深く理解することの重要性が語られた。

 続いて行われた教育講演「糖尿病理学療法の最前線」(司会=信州大・大平雅美氏,石川県立中央病院/片田圭一氏)では,井垣誠(公立豊岡病院日高医療センター),横地正裕(三仁会あさひ病院・春日井整形外科),野村卓生(関西福祉科学大),河辺信秀(茅ヶ崎リハビリテーション専門学校)の4氏が臨床での具体的な取り組みとその効果を報告。糖尿病に伴うさまざまな合併症を運動器の機能障害という切り口からとらえることで,理学療法士の知識・技術を最大限に発揮することができるのではないか,との見解が示され,チームの一員としての積極的なかかわりを促した。

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