MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内
2013.04.22
Medical Library 書評・新刊案内
パトリシア ベナー,パトリシア フーパー-キリアキディス,ダフネ スタナード 著
井上 智子 監訳
《評 者》佐藤 紀子(女子医大教授・看護職生涯発達学)
あらゆる分野や場で働く看護師に読んでいただきたい一冊
20数年前,1992年に出版された『ベナー看護論』(医学書院)と出会ったときから,私はベナー博士からの問いかけによって研究者として,また看護学の教育者として歩き始めたような気がしている。
今回出版された『ベナー 看護ケアの臨床知 第2版』は,クリティカルケア領域の看護師たちによって語られたナラティヴが,初版以上に多数示され,その実践に埋め込まれている臨床知を概念化して提示している。ナラティヴだけを追いかけて読んでいくと,書かれている状況が目に浮かび,看護師が日常的に非常に多くの判断をしながら行動していることにあらためて驚かされる。
今回の改訂版には手術室看護師のナラティヴも10件程度紹介されている。私は手術看護分野の認定看護師教育に10年近くかかわってきたが,これらのナラティヴは,手術室看護師が先見性を持ちつつ危機管理能力を発揮していること,患者や家族へのケアリングを実践していること,技術的環境での危険防止をしていることが具体的に表現されており,日本の手術看護のさらなる発展にエールを送られたと感じている。そして,当の手術室看護師にとっては日常的な実践の中に,優れた臨床知があることを気付かせてくれるものであった。
ベナー博士は,看護師にインタビューし語ってもらうことでナラティヴを記述し,臨床知として概念化しているが,同様に看護師の臨床知に関心を持ち研究に取り組んでいる私は,看護師たちに対してまずは書くことを奨励してきた。書くことは自身の実践を省察する機会になり,日本の看護師たちは語ることもできると思うが,書くことも巧みであると感じている。今後は,語ることと書くことのそれぞれの強みを生かしながら,実践の中に埋め込まれた臨床知の言語化に,実践家とともに取り組んでいきたいと思う。
また,私が刺激を受けた記述の一つは,「驚くほどの数の看護師が,実践の最も基本的な側面,すなわち,問題や,1人の人間としての患者に積極的に関わるということが身についていないのである。積極的に関わるには,綿密に準備した重要な方法で情緒的につながりをもち,そのうえですぐれた臨床家の把握や考察,推論,判断,介入,やりとりを導く方法について学ぶ(または教わる)必要がある。」(p876)という記述である。看護師が仕事を継続する中で,豊かな臨床知と能力を獲得していけば,看護現場は大きく発展するのだろうと考えさせられた。
クリティカル領域の看護師だけではなく,あらゆる分野...
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