医学界新聞

寄稿

2013.03.25

【寄稿】

チーム基盤型学習法(TBL)の効果とコツ

尾原 喜美子(高知大学医学部看護学科長・臨床看護学教授)


 大学では,一人の教師が多くの学生に一斉講義を行うのが一般的です。しかし,看護学教育では,医療や看護の知識だけでなくさまざまな出来事を的確に判断し対応する力が求められるため,対人関係スキルや問題解決能力などの育成が重視されます。高知大では2009年度より看護学基礎教育にチーム基盤型学習法(TBL;Team Based Learning)を取り入れてきました。本稿では4年間実施したTBLによる学生の成績やピア評価などの結果を基に,TBLの有効性と課題について説明します。

3段階で進められるTBL

 TBLとは,知識を応用する能動的な学習に学生を引き込むことを重視し,グループで協働して互いに教え合う能力を鍛える少人数チーム学習の教育法です。PBL(Problem Based Learning)に比べ,大規模クラスで一斉に授業を行える利点があり,2003年ごろから米国を中心に医学教育等で用いられています。

 TBLの授業は,「予習」「準備確認」「学習内容の応用」の3段階で進めます。まず「予習」では,学習目標を達成させるために,教員が事前に授業の資料や参考書などの学習範囲を学生に伝え,学生はその範囲を個別学習して授業に臨みます。次に「準備確認」として予習知識を確かめるための多肢選択型の個人テスト(IRAT;Individual Readiness Assurance Test)を授業の初めに行います。終了後,IRATは教員が回収・採点して,個人評価点として記録。学生は,同じ問題でチームテスト(GRAT;Group Readiness Assurance Test)を行い,合議により解答を導き出す「学習内容の応用」を行います。このときチーム内での討論は学生間の協調性を高め,「予習」と「準備段階」で得た知識の活用を促し,個人やチームでの学習が不完全な部分を明らかにします。一定時間の後,すべてのチームがクラス全体に解答を提示。各チームは解答の根拠を説明することで,知識の確認を行います。最後に教員が学生の解答に対するフォローを行い,学生は自チームの答えと他チームの答えとを比較。チームや個人に不足していた点を確認します。

成功させるための4つのコツ

 TBL導入に当たってはいくつかのコツがあり,従来の講義形式の授業からTBLの授業に転換するためには事前の準備が必要です。授業を行う教員はもちろん,授業を受ける学生もTBLの方法について習熟し,理解しておく必要があります。

 TBLでの授業に際し,気をつけるべき点を4つ挙げます。

1)チームを適切に編成すること

 チームの構成人員は5-7人が適切で,さまざまな個性のメンバーが含まれることが望ましいでしょう。GRATがメンバー間のなれ合いや惰性で行われる

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