医学界新聞

2013.01.28

Medical Library 書評・新刊案内


チームで支える母乳育児
「赤ちゃんにやさしい病院」の取り組み

杉本 充弘 編
日本赤十字社医療センターBFHI推進委員会 執筆

《評 者》山内 芳忠(前 国立病院機構岡山医療センター)

自施設との違いが明瞭になる現場の事例を豊富に収載

 「時は,流れる。時代はかわる……」,これは母乳育児の復興に情熱を燃やした故山内逸郎先生の後輩たちへのメッセージの巻頭文である。母乳育児の重要性や必要性は,医療者や母親たち,誰もが認めながらも実際には,退院後1か月の時点で約5割の母子しか実践できていないのが現状である。分娩をはじめ,母子を取り巻く環境の大きな変化があったにもかかわらず,以前のままの体制で,母乳の利点の側面のみが強調されていることが,現状の閉塞感につながっているといえるのではないか。

 このたび,『チームで支える母乳育児』という,日赤医療センターの施設における母乳育児の取り組みを紹介した本が出版された。日赤医療センターは2000年にWHO/UNICEFの「赤ちゃんにやさしい病院(BFH)」に認定されている。本書は"母乳育児支援になぜ,施設で取り組む必要があるのか"の疑問に応えてくれる。BFHとして母乳育児支援を維持するための現場の事例が随所に盛り込まれており,読みながら自分の施設の現状や取り組みの違いを明瞭に知ることができる。

 施設での母乳育児の取り組みは,情報をいかに共有するかが重要な点である。母子にかかわるスタッフやチームが課題ごとに議論をし,個々の母子に合ったものに修正しながら母乳育児支援に取り組み,地域へと連携をしていくことの重要性が具体性と詳細な記載で紹介されている。読者は,状況を思い浮かべながら読むことができるので,大変理解しやすい。

 最近,BFH認定をめざす施設が増えてきた。日本の母乳育児の広がり,ひいては母子医療の改善にBFH推進運動は大きな役割を果たしている。「日赤医療センターは助産師が多い施設だからできるのだ」とか,また「ハイリスクを扱う施設だから母乳育児は無理だ」といった発言もあるが,読み進むうちに,どんな状況においても母乳育児支援はできることがわかる。日赤医療センターはハイリスクの妊

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