臨床・教育現場における利益相反を考える
2012.12.24
臨床・教育現場における利益相反を考える
「医師と製薬企業の日常臨床,医学教育における適切な関係を考える」シンポジウムが12月8日,立教大(東京都豊島区)にて開催された。本シンポジウムは,2011年度文科研"医学生・研修医と製薬企業との関係に関する調査研究"研究班が主催するもの。冒頭,研究代表者の宮田靖志氏(北大病院)より,医学研究における利益相反(COI)については行政や複数の学術団体からガイドラインが示されるなど自主規制の意識が高まっているが,臨床・医学教育におけるCOIの議論はいまだ十分でないことが明らかにされた。
シンポジウムのもよう |
日本製薬工業協会(JPMA)からは森田美博氏が登壇した。製薬企業70社が加盟するJPMAでは,昨年「企業活動と医療機関等の関係の透明性ガイドライン」を公表。会員各社が「透明性に関する指針」を策定するとともに,医療機関等への資金提供について,2012年度分からの公開を決めた(2013年度開始)。氏は,製薬分野への社会からの信頼をより一層高めるべく,ガイドラインの周知に努めたいと抱負を述べた。
メディアの立場からは北澤京子氏(日経BP社)が,米NPO「Propublica」による資金提供データベースや,利益相反,過剰な疾病啓発などの視点から健康・医療関連報道を評価するウェブサイト「Health News Review」を紹介。メディアは,取材対象である専門家のCOIについてより積極的に調査・公表すべきとする一方,中立的・独立的な報道の在り方を検討する必要性も示唆した。
後半のフロア討論(司会=立教大/日本医学教育学会・大生定義氏)では,さまざまな立場から率直な意見が相次いだ。地方の医師からは「製薬企業のサポートなしには,研究会などの開催が難しい」実情が語られ,企業側からは「販促によって薬の正しい情報を広く伝えられ,より多くの患者さんを救える」という思いも聞かれた。一方若手医師から「学生時代にCOIについて知る機会がない」との訴え,教育者から「手本となる上級医がプロフェッショナリズムを意識し,ふさわしい行動を心掛けるべき」という声も上がった。さらに「販促活動費をまとめてプールする仕組みを作り,費用の拠出もそこから行っては」という提案もなされた。
最後に大生氏より「日本の医療風土に即したCOIの規制の在り方を,医療者側から提案していきたい」と抱負が述べられ,シンポジウムは盛会裏に終了した。
いま話題の記事
-
医学界新聞プラス
[第1回]心エコーレポートの見方をざっくり教えてください
『循環器病棟の業務が全然わからないので、うし先生に聞いてみた。』より連載 2024.04.26
-
PT(プロトロンビン時間)―APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)(佐守友博)
連載 2011.10.10
-
事例で学ぶくすりの落とし穴
[第7回] 薬物血中濃度モニタリングのタイミング連載 2021.01.25
-
連載 2010.09.06
-
寄稿 2016.03.07
最新の記事
-
医学界新聞プラス
[第3回]文献検索のための便利ツール(前編)
面倒なタスクは任せてしまえ! Gen AI時代のタイパ・コスパ論文執筆術連載 2024.10.11
-
対談・座談会 2024.10.08
-
対談・座談会 2024.10.08
-
神経病理の未来はどこへ向かうのか?
脳神経内科医と病理医の有機的なコラボレーションをめざして対談・座談会 2024.10.08
-
インタビュー 2024.10.08
開く
医学書院IDの登録設定により、
更新通知をメールで受け取れます。