金原一郎記念医学医療振興財団贈呈式
2012.11.26
金原一郎記念医学医療振興財団
第52回認定証(第27回基礎医学医療研究助成金)贈呈式開催
金原一郎記念医学医療振興財団(理事長=東大名誉教授・野々村禎昭氏)は,このほど「第27回基礎医学医療研究助成金」の交付対象者として41名(助成総額1740万円)を選出。10月29日に,医学書院(東京都文京区)にて第52回認定証贈呈式を開催した。
開会に際して,金原優同財団業務執行理事(医学書院代表取締役社長)が,医学書院の創業者・金原一郎の遺志を継いで設立された本財団の概要を紹介し,「この受賞を励みにさらに良い研究を続けてほしい」と選出された対象者を激励した。
認定証贈呈の後,同財団理事長で選考委員長の野々村氏が,約200名の応募があった今回の選考経過について説明。また,iPS細胞研究のノーベル賞受賞をたたえ,「基礎医学研究は世間に成果が認められにくく,資金も十分ではないかもしれないが,こうした助成等を活用しながら今後も基礎医学の発展のため研鑽してほしい」と対象者への期待を述べた。
続いて,受賞者を代表して竹林浩秀氏(新潟大大学院教授・助成対象「神経幹細胞の維持および分化制御におけるOlig2転写因子の機能解析」)が挨拶に立った。氏はこれまでの研究で,Oligファミリーという新規の転写因子ファミリーを同定し,その機能解析を行うことによって,OligファミリーのなかでもOlig2転写因子が中枢神経系の運動ニューロンやグリア細胞であるオリゴデンドロサイトの発生にかかわることを明らかにしてきた。今回の受賞研究では,Olig因子が転写因子として働く際に結合する因子を対象とし,複雑な脳が形成されるメカニズムの解明を目的としている。将来的には,統合失調症など神経難病の病態解明や,その治療法開発につながるという。氏は,「最近は若手の基礎研究離れも進んでいる。これからは研究の発展とともに,若手の人材育成にもかかわっていきたい」と抱負を述べた。
●金原一郎記念医学医療振興財団
第27回基礎医学医療研究助成金交付認定者一覧
No. | 氏名 | 所属機関(略称) | 助成金対象 |
1 | 今泉 聡 | 福岡大 心臓・血管内科学 |
新規アポA-I 模倣ペプチドによる新たな動脈硬化診断・治療法の確立 |
2 | Wong Richard | 金沢大 理工 分子細胞 |
核膜孔複合体因子によるエピジェネティクス制御を介した癌の発生・進展機構の解明 |
3 | 大寺 秀典 | 九大 分子生命科学 |
ミトコンドリア分裂制御因子群の同定と機能解析 |
4 | 金沢 一平 | 島根大 内科第一 |
DPP-4阻害剤が骨に及ぼす影響の検討 |
5 | 河原 行郎 | 阪大 遺伝子機能制御 |
TDP-43断片化機構の解明 |
6 | 幸谷 愛 | 東海大 創造科学研 |
癌細胞由来小分子RNAによる炎症細胞の制御 |
7 | 小島 祥敬 | 福島県立医大 泌尿器科 |
ゲノム薬理学に基づく前立腺肥大症薬物治療における個別化医療の確立 |
8 | 小塚智沙代 | 琉球大 内分泌代謝 |
玄米由来物質による抗肥満・抗糖尿病効果の新規メカニズム解明と肥満2型糖尿病に対する医療応用 |
9 | 小林 省吾 | 阪大 消化器外科 I |
悪性腫瘍におけるIL6/TGFβクロストークが周囲環境にもたらす影響 |
10 | 阪口 政清 | 岡山大 細胞生物 |
RAGE複合体情報処理ユニットによるがん進展お分子基盤解析 |
11 | 坂部 正英 | 奈良医大 循環器システム |
心臓形態形成における内皮・間葉細胞分化の分子メカニズム |
12 | 笹井 美和 | 阪大 微研・感染病態 |
細胞内小胞輸送分子を介したサイトカイン産生の分子機構の解明 |
13 | 佐原 寿史 | 鹿児島大 臓器置換・異種移植外科 |
移植後免疫寛容誘導を目指した間葉系幹細胞療法―至適投与時間と作用機序のMHC確立ミニブタ肺移植モデルによる基礎的検討 |
14 | 七田 崇 | 慶応大 微生物学 |
組織傷害と炎症におけるペルオキシレドキシンの機能解明 |
15 | 地主 将久 | 北大 遺伝子病研・感染癌研 |
ミエロイド細胞の自然免疫シグナル活性を指標とした新たな生活習慣病発症予測マーカーの開発 |
16 | 島村 宗尚 | 阪大 健康発達医学 |
脳梗塞後の炎症反応におけるOPG/RANKL/RANK系の機能解明 |
17 | 城村 由和 | 名市大 細胞生化学 |
リン酸化酵素Plk1のPolo-boxドメインを標的とした新規がん治療薬の開発のための基盤研究 |
18 | 杉山 大介 | 九大 造血幹細胞 |
肝臓類洞内皮細胞発生を制御する新規因子の同定とその機能解析 |
19 | 宗 孝紀 | 東北大 免疫学 |
TRAF5の抗炎症作用の解明 |
20 | 薗部 佳史 | 名大 神経免疫学 |
アルツハイマー病におけるアストロサイトの役割―非造血系細胞により引き起こされる炎症反応 |
21 | 高木 清司 | 東北大 病理検査学 |
アンドロゲンによる乳癌の増殖抑制メカニズムの解明―乳癌の新規治療標的の探索に向けて― |
22 | 竹林 浩秀 | 新潟大 解剖学 |
神経幹細胞の維持および分化制御におけるOlig2 転写因子の機能解析 |
23 | 谷村 進 | 長崎大 細胞制御学 |
Myosin1Eのリン酸化を介した細胞運動調節機構の解明 |
24 | 玉井 恵一 | 宮城県立がんセンター がん治研 |
ヒト化肝臓マウスを用いた小胞輸送修飾によるC型肝炎ウイルス増殖抑制 |
25 | 中嶋 洋行 | 国立循環器病センター 細胞生物学 |
機能的血管再生に向けた血管内腔形成機構の解析 |
26 | 中山 隆宏 | 金沢大 バイオAFM先端研 |
高速原子間力顕微鏡を用いたジストロフィン‐アクチン線維複合体の動的構造変化の観察 |
27 | 西田 奈央 | 国立国際医療研究センター 肝炎・免疫 |
C型肝炎に対するインターフェロン療法の治療無効・副作用にかかわる遺伝要因の探索 |
28 | 野中太一郎 | 京大 免疫細胞生物学 |
皮膚・頭頸部癌の免疫監視からの回避機構に関する研究 |
29 | 羽澤 勝治 | 放医研 緊急被ばく |
細胞接着性タンパク質Vitronectinと線溶因子PAI-1のクロストークによる細胞生存シグナル制御機構の解明 |
30 | 林 真理子 | 慶応大 薬理学 |
グルタミン酸トランスポーターEAAT2の糸状仮足への局在決定因子と神経シナプスとの相互作用 |
31 | 平山 順 | 医歯大 難治研・発生再生生物学 |
概日リズム制御における活性酸素種のシグナル分子としての役割 |
32 | 堀居 拓郎 | 群馬大 生体調節研 |
移植しても腫瘍形成しにくい多能性幹細胞の開発 |
33 | 松田 達志 | 関西医大 生体情報 |
mTORC1シグナルによる樹状細胞分化制御機構の解明 |
34 | 三浦 康生 | 京大 輸血細胞治療部 |
間葉系幹細胞を利用した新しい臍帯血移植の開発に関する基礎的検討 |
35 | 森 秀一 | 東京都健康長寿医療センター | 新規の抗MuSK抗体重症筋無力症の動物モデルを使った発症メカニズム解明と治療薬の探索 |
36 | 森川 鉄平 | 東大病院 病理部 |
癌微小環境が癌患者の予後に及ぼす影響 |
37 | 諸岡 信克 | 群馬大 核内情報制御 |
血管慢性炎症病態における新規エネルギーシグナル依存性エピゲノム環境制御法の開発 |
38 | 安井 孝周 | 名市大 腎・泌尿器科 |
尿路結石の形成初期における腎尿細管細胞内のミトコンドリア機能の解明 |
39 | 山澤 一樹 | 慶応大 小児科 |
ゲノムインプリンティング異常に起因する先天異常症候群において5-ヒドロキシメチルシトシンが果たす役割の解明 |
40 | 山田 健一 | 九大 薬 機能分子解析学 |
脂質ラジカル検出手法開発と化学発がんモデルへの応用 |
41 | 吉見 昭秀 | 東大病院 無菌治療部 |
全エクソームシークエンスを用いた再生不良性貧血患者の骨髄間質性細胞の体細胞遺伝子変異の同定 |
いま話題の記事
-
医学界新聞プラス
[第1回]心エコーレポートの見方をざっくり教えてください
『循環器病棟の業務が全然わからないので、うし先生に聞いてみた。』より連載 2024.04.26
-
PT(プロトロンビン時間)―APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)(佐守友博)
連載 2011.10.10
-
事例で学ぶくすりの落とし穴
[第7回] 薬物血中濃度モニタリングのタイミング連載 2021.01.25
-
寄稿 2016.03.07
-
連載 2010.09.06
最新の記事
-
医学界新聞プラス
[第4回]腰部脊柱管狭窄症_術後リハビリテーション
『保存から術後まで 脊椎疾患のリハビリテーション[Web動画付]』より連載 2024.10.14
-
医学界新聞プラス
[第3回]文献検索のための便利ツール(前編)
面倒なタスクは任せてしまえ! Gen AI時代のタイパ・コスパ論文執筆術連載 2024.10.11
-
対談・座談会 2024.10.08
-
対談・座談会 2024.10.08
-
神経病理の未来はどこへ向かうのか?
脳神経内科医と病理医の有機的なコラボレーションをめざして対談・座談会 2024.10.08
開く
医学書院IDの登録設定により、
更新通知をメールで受け取れます。