医学界新聞

2012.11.26

第50回日本癌治療学会開催


 第50回日本癌治療学会が笹子三津留会長(兵庫医大)のもと,「黎明から飛躍へ」をテーマに,パシフィコ横浜(横浜市)で開催された。本学会は,医療者に加え,がん患者などの当事者が登壇する演題も数多く企画されている。本紙では,がん医療にかかわる患者,医療者がともに登壇し,現在の日本のがん医療を多角的に考察したシンポジウムのもようを報告する。


会長講演のもよう
 日本におけるがん対策は確実に歩みを進めてきているが,依然として十分なものとは言いがたい。特別企画「がん医療――患者さんに期待するもの,患者さんに求められるもの」(司会=日本対がん協会・垣添忠生氏,岩手医大・杉山徹氏)では,医療者や,がん患者団体関係者がさまざまな角度からがん医療とそれを取り巻く社会の現状を論じた。

浮き彫りになったがん医療の問題点

 初めに登壇した天野慎介氏(NPO法人グループ・ネクサス)は,患者の立場から日本のがん医療の問題点について言及した。氏が指摘したのは,(1)がん医療の質が適切に評価され,公開されていないこと,(2)医療の成果や医療者の努力が国の制度や仕組みにより医療の質に反映されないケースがあること,(3)精神的・社会的な苦痛を軽減させる取り組みが不十分であること,(4)緩和ケアや在宅医療の取り組みが遅れていることの4点。氏はこれらの問題について,「学会や患者団体だけでなく,社会の中で共有し,対応していかなければ解決できない」と訴えた。

 手術中のリンパ節転移の有無の術中迅速診断や,放射線治療や薬剤治療の効果判定など,がん医療のさまざまな場面で重要な役割を果たす病理医。下田忠和氏(国立がんセンター)は,その病理医ががん診療連携拠点病院においても不足している現状を報告した。病理の担い手を増加させる方法として,複数の病理専門医が所属する施設を拡充して指導体制を整備することや,臨床研修における病理診断報告書作成とカンファレンスでの報告を充実させ

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