医学界新聞

2012.10.29

日本の医療と『週刊医学界新聞』の60年


 1955年の創刊から,医学・医療の最新トピックを伝え続けてきた『週刊医学界新聞』。このたび3000号を迎えるにあたり,過去の紙面を紐解き,その歴史を俯瞰した。わが国の医療のあゆみとともに振り返る,『週刊医学界新聞』的60年史。

……『週刊医学界新聞』関連トピック
……医学書院関連トピック


■1955年

『科学図書新聞』を買収,『旬刊醫學界新聞』に改題(1)
 社に残る,最も古い『科学図書新聞』は99号(1953年3月25日発行)。151号より『旬刊醫學界新聞』(毎月5・15・25日発行)と改題。153号で『醫學界新聞』と改題された。


■1957年

「旬刊」から「週刊」化(2)
 『醫學界新聞』が「旬刊」から「週刊」化(218号)。続けて『医学界新聞』に改題(219号)され,249号で現在の『週刊医学界新聞』となった。タイトルロゴも変化を重ねている。

抗生物質カナマイシンの発見(3)
 国産初の抗生物質として,梅澤濱夫氏(国立予防衛生研)らが発見。このころは,集団健診,全国的な実態調査など,結核の話題が紙面の多くを占める(写真は240号)。


■1959年

『今日の治療指針』創刊(4)
 石山俊次氏(関東逓信病院),日野原重明氏(聖路加国際病院),渡辺良孝氏(東京厚生年金病院)編集,250人の執筆者により創刊。「私はこう治療している」をキャッチフレーズに,全科全領域を網羅する治療年鑑として現在まで不動の地位を築く(写真は350号)。


■1961年

看護領域の特集号が初めて組まれる(5)
 453号前後から「看護特集号」を隔月1回ペースで企画。写真は1963年発行の特集「看護制度15周年を迎えて」(566号)。看護領域の三制度を統合し,国家資格化すべく発布された「保健婦助産婦看護婦令」(48年)からの15年を振り返った。


■1962年

第1回医学書院看護学セミナー開催(6)
 1962年度日本看護協会総会に際し,第1回医学書院看護学セミナーを東京・両国公会堂で開催。同セミナーは現在までに145回を数える(写真は485号)。

「まむしのたわごと」連載開始(7)
 医学書院創業者・金原一郎の名物エッセーで,1981年(1468号)まで連載。医学書院HPにて,全文の閲覧が可能。「まむし」は金原一郎の自称で「一度食いついたら離れない執念」に由来する。


■1965年

交通救急センター開設(8)
 経済・産業の発展とともに自動車が普及した反面,交通事故などによる重症外傷患者が増加。こうした患者の受け入れのため,神奈川県に全国初の施設が誕生した。

国立小児病院開院(9)
 わが国初の小児疾患専門の病院として,小児医療の中枢的役割を担った。2002年に国立大蔵病院と統合し,国立成育医療センター(現・国立成育医療研究センター)となる(写真は666号)。


■1968年

インターン制度廃止(10)
 1967-68年にかけ,学生運動の激化に伴い,インターンおよび無給医局員をめぐる問題が過熱。東大医学部インターン生が医師国家試験をボイコットする事態も発生した。68年の医師法改正でインターン制度は廃止。学部卒業時の国家試験受験が可能となり,「医師免許取得後2年以上の臨床研修を努力規定とする臨床研修制度が創設された。


■1971年

環境庁発足(11)
 1967年の公害対策基本法制定を受けたもの。高度経済成長による都市化・工業化のひずみが水俣病,イタイイタイ病などの公害病となって表れ,公害対策が急務とされた。


■1972年

1000号発行(12)
 特集ではテレメディシン(遠隔診療)を取り上げた。へき地医療対策に,当時最先端のエレクトロニクスを活用した新しい診療方法への期待が伺える。


■1973年

第1回内科専門医試験実施(13)
 日本内科学会が認定する内科専門医制度の第1回試験が行われ,17人中5人が合格。本制度は,1994年から「認定医制度」と形を変え,他の内科系領域の専門医取得の基礎資格となっている。


■1975年

東京女子医大に日本初のCT導入(14)
 当時は撮影に数分かかり,頭部専用装置として導入された。1288号の対談「CT時代を迎えて」(東大・佐野圭司氏×同・田坂皓氏)では,救急医療や脳腫瘍治療への貢献のほか,金銭的負担や技師の育成など課題も語られた。


■1976年

准看護婦養成廃止総決起大会(15)
 戦後の看護婦不足解消のため,1951年に導入された准看護婦制度の存廃をめぐる議論が高まる。同大会では,准看護婦制度の廃止および高卒者対象の3年以上の看護教育を求め,将来的には大学での看護教育を目標に定めた(写真は1195号)。

「救急医療懇談会」発足(16)
 救急患者の受け入れ困難例が増加するなか,厚生省による「救急医療懇談会」が発足。患者受け入れ体制や情報ネットワークの整備に向け検討を開始した。また同年,日医大病院等4病院が救命救急センターに指定された。


■1981年

AIDS症例が世界で初めて報告される(17)
 この年,米国疾病管理予防センターからAIDSの最初の症例が報告された以来米国で積み重ねられてきたAIDSの臨床的所見について,本紙では記事「急増する米国のAIDS」で紹介。これ以降も,1980年代にはAIDSを扱う記事が多く見られる(写真は1548号)。


■1983年

「生命と倫理に関する懇談会発足(18)
 体外受精や臓器移植が可能になるなど医療技術が大きく進歩する一方,脳死や生殖医学など,生命倫理の諸問題への関心が高まってきたのがこのころこうした背景を受け,厚生省により同懇談会が発足した。


■1984年

初のカラー紙面(19)
 1581号にて初めてカラー印刷を採用。特集は「見る技術としての医学」。1600-1800年代の顕微鏡から当時最新の電子顕微鏡までが紹介された


■1987年

利根川進氏にノーベル生理学・医学賞(20)
 1987年,遺伝子工学的手法による抗体生成に関する免疫グロブリンの構造を解明した功績により,利根川進氏がノーベル生理学・医学賞を受賞。日本人初の同賞受賞者となった


■1992年

2000号発行(21)
 特集では,聖路加国際病院が新築されたのを期に当時の院長・日野原重明氏にインタビュー。また,「医人たちの20年」と題し ,これまでの紙面を飾った人々をコラージュ風に紹介した。


■1995年

阪神・淡路大震災(22)
 本紙では,震災後の医療活動について紹介。その10年後,災害時に医療者が果たすべき役割をあらためて検証した(写真は2615号)。


■1996年

医学書院HP開設(23)
 1996年に医学書院HP開設。郵政省の「平成8年度通信利用動向調査によれば,当時は「パソコン通信利用世帯」が4.6%(対象:4159世帯)という時代だった。写真はHP開設当初のトップページ。

専門看護師の誕生(24)
 日本看護協会設立50周年のこの年,「精神看護」分野で2人,「がん看護」分野で4人の専門看護師が誕生した。2012年現在,専門看護分野は合計11分野にまで発展している。


■2004年

新医師臨床研修制度開始(25)
 インターン制度の廃止から36年,マッチングシステムを伴う新たな医師臨床研修制度が開始された。同号では,日本の「臨床研修」の過去・現在・未来を探った(写真は2566号)。


■2007年

がん対策基本法施行(26)
 同年4月の「がん対策基本法」施行に向け,新年号にて基本法の理念や拠点病院の現状を紹介。今後のがん医療を展望した(写真は2713号)。


■2008年

「MedicalFinder」本格稼働(27)
 電子ジャーナルサイト「MedicalFinder」開始。医学書院より発行されている医学・看護領域の30誌以上を電子化,創刊号から読めるものも。


■2009年

EPA看護師候補者が初めて国家試験を受験(28)
 この年,経済連携協定(EPA)に基づいて来日した外国人看護師候補者が初めて国家試験を受験。2012年までに,インドネシアとフィリピンから受け入れた候補者のうち計66人が合格。

新型インフルエンザが世界的に流行(29)
 この年,新型インフルエンザ(A/H1N1)が世界的に流行。国内では学術集会の延期・中止も。同年6月11日,WHOは警報フェーズをパンデミック期とする「フェーズ6」まで引き上げる声明を出した(写真は2812号)。


■2010年

《シリーズ ケアをひらく》から2冊が受賞(30)
 《シリーズ ケアをひらく》より,『逝かない身体-ALS的日常を生きる』(川口有美子著)が第41回大宅壮一ノンフィクション賞を,『リハビリの夜』(熊谷晋一郎著)が第9回新潮ドキュメント賞を受賞した。


■2012年

山中伸弥氏にノーベル生理学・医学賞(31)
 2012年,成熟した細胞を,多能性を持つ状態に初期化できることを発見した功績により,山中伸弥氏(京大iPS細胞研究所長)がノーベル生理学・医学賞を受賞した。

■『週刊医学界新聞』第3000号発行に寄せて

金原 優((株)医学書院代表取締役社長)


 本紙『週刊医学界新聞』は,本号をもって通算3000号となりました。本紙読者である専門職の先生方ならびに関係各位に対し長年のご愛顧に深く感謝するとともに,日頃の弊社出版物へのお引き立てに厚く御礼申し上げます。

 『週刊医学界新聞』は創刊以来約60年の歴史を重ねておりますが,その間一貫して医学・医療関連領域の最新のニュース,医療制度・医学教育制度の改革ならびに医学研究と医療技術の進歩,医学関連学会の動きなどをいち早く読者の皆様にお伝えすることを目的として発行してまいりました。この間,医学と医療の進歩は目覚ましく,新知見や新たに発現した疾病に対する治療技術も日々変化しております。本紙はその最新情報を読者の皆様にお伝えしてまいりましたが,それらは医学・医療関連領域の発展,進歩に少なからず役立ってきたのではないかと自負しております。

 弊社は1944年8月の創業以来,「医学書院は専門書出版社としての役割と責任を自覚し,医学・医療の進歩に必要な専門情報を的確に伝え,医学・医療の発展と社会の福祉に貢献することを使命とする」ことを社是として出版活動を展開しております。その範囲は基礎医学,臨床医学,看護学,リハビリテーション,介護などの医学・医療関連領域全体を広く網羅し,同領域における総合医学情報出版社として先生方の要請にお応えする体制を整えております。また,情報提供媒体も書籍,雑誌のみならず,電子媒体,インターネットアクセスによる電子出版にも広く対応し,特に雑誌は発行全31誌を電子ジャーナルとして提供しております。

 本紙『週刊医学界新聞』も弊社の情報提供媒体の一つとして発行を続けてまいりましたが,今後も継続して医学・医療関連領域の先生方にとって不可欠な情報を提供してまいります。読者各位におかれましては引き続き本紙をご愛読いただくとともに,弊社出版物に対するご支援とお引き立てをお願い申し上げます。