医学界新聞

寄稿

2012.09.10

視点

学生有志による看護職サポート
――三重県の取り組み

江角悠太(三重大学大学院 臨床医学系講座家庭医療学分野)


 「救急患者を受け入れると,入院が増え,看護師の労働が増える。看護師が疲弊すれば救急患者を診ることができなくなる。患者さんを助けようと思えば思うほど,患者さん自身を苦しませることになる……」

 初期研修でいた沖縄から三重に戻って以来,筆者が感じてきたジレンマだ。こうした問題意識に共感し,協力してくれているのがMUSH(Mie University Students Helper)という三重大学の医学生と看護学生の有志である。

 MUSHには医学生と看護学生合わせて40名程が所属している。授業が終わってからの準夜帯や土日に,主に三重大学病院救命救急センターのICUや亀山市立医療センターという地域基幹病院で,看護助手として看護師の業務をサポートするのが彼らの役割だ。看護師の労働を軽減することで,救急患者の受け入れをスムーズにし,救急たらい回しや受け入れ拒否の状況を緩和し,少しでも早く患者さんの不安と病を取り除きたいという思いを胸に活動している。病院からの協力で賃金も給付していただいている。

 体位変換に汗を流し,おむつ交換で便まみれになり,尿や排液ドレーン類の回収,不隠患者さんの見守り,エンゼルケア,検体運びや患者さんの移動,時には食事介助をしながら患者さんと話し込むことも。何を頼まれても快く引き受け,吸収し,次に活かす。看護の助けをしたいという彼らの積極的な姿勢は,看護師にも評判が良く,実際助けにもなっているようだ。また,そんな学生に対し,採血などの手技,患者さんの病態などを教えようと声を掛けるスタッフや研修医もいる。

 学生は「看護師の仕事が初めて理解できた」「もっとできることを増やしたい」「大学の実習よりも実習らしい(笑)」なんてことを言いながら,勇ましい表情を浮かべて働いている。他にも,「実際に実施した業務が授業に出た」「大学の授業が面白くなった」「看護師としての将来のイメージがわいた」という意見があり,医学生も看護学生も患者さん以上に恩恵を受けているようだ。

 現在,看護師不足により存続困難な病院が,三重県内だけでなく全国的に存在する。学生の時間とあり余るエネルギーを看護師,ひいては患者さんのために活かすことは,学生にとっても多大な財産になる可能性を秘めている。今後は医学と関係の薄い他学部の学生からの参加も募り,患者さんに接する機会を通して,死や生を感じ,自分の人生の意味を考え,将来の人生の肥やしにしてほしいと思う。患者さんのための医療が,さらに推進されることを望んでいる。全国的にも彼ら学生の心の火が広がるよう,日々サポートしていきたいと思う。


江角悠太
2009年三重大医学部卒。沖縄県中部徳洲会病院での初期研修を経て,11年より後期研修医として三重県内の地域基幹病院,大学病院で研修中。将来は緩和医療を学び,人が亡くなるときに「最高の人生だった」と思えるような医療を,医療以外の業種とも協力し実践したい。学生の力もお借りして。

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