医学界新聞

2012.08.27

第38回日本看護研究学会開催


 7月7-8日,第38回日本看護研究学会(会長=琉球大・宇座美代子氏)が沖縄コンベンションセンター(沖縄県宜野湾市)にて開催された。「文化に根ざす看護研究の道――沖縄から発信」というテーマを掲げた今大会では,沖縄の地ならではのユニークな講演やシンポジウムが多数行われた。本紙では,沖縄の地域文化と看護との関係を論じた会長講演と,看護教育界で注目を集めているシミュレーション教育に関する交流集会のもようを紹介する。


地域文化を尊重した看護を

宇座美代子会長
 会長講演「沖縄の文化に根ざした看護研究――ユイマールからヌジファまで」では,沖縄文化が地域の保健福祉や看護に及ぼす影響について,宇座氏が考察した。

 「ユイマール」とは,地域共同体における相互扶助を意味する沖縄固有の言葉。現在も助け合いの意味で広く用いられており,県民の生活には隣近所への日常的な支援の意識が根付いている。こうした地域独自の文化的背景が,沖縄の高齢者介護における地域ケアシステムの構築に良い影響を及ぼしているという。氏は,「ユイマール」は現代に求められるソーシャルキャピタルの概念そのものとの見解を示した。

 一方,医療従事者が地域独自の文化に困惑した事例もある。氏の調査では,方言を用いる高齢者との意思疎通や古くから行われている伝統的儀礼に対し,多くの看護師や保健師が業務への支障を感じた経験を持つことが判明。例えば,死者を弔うための儀礼である「ヌジファ」は,火を用いるため病院内で行うには十分な配慮が必要だ。これについて氏は,伝統的儀礼はグリーフケアの機能も果たしていると指摘し,遺族の意思を尊重した柔軟な対応を医療者に求めた。また,方言の理解については,高齢者の要望を汲むために欠かせないスキルとし,継続的な方言教育の必要性を主張した。

 氏は,固有の文化が色濃く残る沖縄では,地域のニーズに応じた看護研究や看護教育が必要と訴え,講演を締めくくった。

教育効果を実証するために

 近年,臨床を再現した状況下で,急変患者や災害時の対応を体験し,自身の行動を振り返るシミュレーション教...

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