医学界新聞

2012.07.16

診断時から治療終了後も続くケア

第17回日本緩和医療学会開催


 第17回日本緩和医療学会が6月22-23日,神戸国際展示場(神戸市)他で開催された。「医療者にできることは,患者に関心を持ち,寄り添い続けること」と講演で語った松岡順治大会長(岡山大大学院)のもと,「ひろく ふかく たかく」という大会テーマが掲げられ,多くの演題が発表された。本紙では,サバイバーシップと,早期からの緩和ケアが議論されたプログラムのもようを報告する。


がんを治すだけの時代から次の時代へ

松岡順治大会長
 がん患者と医療者が同じ壇上に並んだパネルディスカッション「サバイバーシップという考え方――がん治療を終えてからも ひろく ふかく たかく」(座長=聖路加国際病院・山内英子氏)では,まずMDアンダーソンがんセンターのLewis Foxhall氏が,がんサバイバーのQOLを高めるために同院で実施している「サバイバーシップクリニック」について発表した。ここでは,再発防止を中心とした患者へのケアだけでなく,プライマリ・ケア医や看護師,ソーシャルワーカーへの教育も行っている。また,後遺症や治療に関する研究も盛んだという。氏は,がんサバイバーシップはがんの治療成績や患者のQOLを高める新興分野だとし,一層の発展に期待を寄せた。

 がんサバイバーの立場からは,桜井なおみ氏(NPO法人HOPEプロジェクト)と小嶋修一氏(TBSテレビ)が登壇。まず桜井氏は自身の経験から,がんと診断された患者は,病になる以前にあったさまざまな役割を喪失することによって,自身の根源的な存在が傷つくスピリチュアルな痛みを感じていると説明。参席した医療者に向けて,患者の生き方を共に支援してほしいと訴えた。一方で,こうした痛みは自分の生きる意味を問いなおすための貴重なキャンサーギフトでもあると,前向きな見解を示した。

 続いて発言した小嶋氏は,がんサバイバーは医療者にとって“生きた教科書”であると強調。氏は,がんの再発を疑って受診した病院で,検査を先送りにされ,強い不安と不信を感じた経験から,患者の不安を少しでも取り除くには即時即断の検査・手術が重要との考えを示した。また,患者の経験談には治

この記事はログインすると全文を読むことができます。
医学書院IDをお持ちでない方は医学書院IDを取得(無料)ください。

開く

医学書院IDの登録設定により、
更新通知をメールで受け取れます。

医学界新聞公式SNS

  • Facebook