第34回日本血栓止血学会開催
2012.07.02
急性期脳梗塞に新たな福音
第34回日本血栓止血学会開催
座長の坂井氏,峰松氏 |
新デバイスの適応症例とは
最初に登壇した植田敏浩氏(聖マリアンナ医大東横病院)は,急性期脳梗塞における新デバイスの適応について述べた。同院では,tPA静注後直ちに脳血管撮影を行い,閉塞血管の再開通が認められない脳梗塞症例で新デバイスによる脳血管内治療を行っている。その際,MRI拡散強調画像で広範囲の異常所見がない症例を適応とし,またCT perfusionで脳血液量,脳血流量の著明な低下がみられる場合には転帰が悪いことから,慎重に適応を判断しているという。脳血管内治療は適応時間(原則発症後8時間以内)の経過後では有害という性質もあるため,治療成績向上のためには適応症例をきちんと見分けることが重要と結論付けた。
山上宏氏(国循)は,急性期脳梗塞治療をめぐる最近の動きを解説した。tPA静注療法については,ECASSIII試験の結果を踏まえ,本年中に日本でも適応時間が3時間から4.5時間へ延長される見込み。また脳血管内治療では,DIAS-J試験で脳血管内治療の適応症例が明らかになってきたこと,さらに本年公表されたSWIFT試験で,ステント型血栓回収デバイスSOLITAIREによる再開通率がMerci retrieverよりも優れるとの結果が得られたことを説明し,今後の展開に期待を寄せた。
Merci retrieverの現状について述べたのは松丸祐司氏(虎の門病院)。血栓の遠位から引く本法では,血栓を一気に回収できるというメリットがあるものの,血管損傷のリスクもあるという。氏の施設では,3分の2の症例で再開通が得られたものの,3分の1では軽度のクモ膜下出血が副作用として生じたことから,本法を行う際には手技に習熟する必要があるとの見解を示した。
もう1つの新デバイスPenumbra systemについては吉村紳一氏(岐阜大)が発言。血栓の手前にカテーテルを置いて吸引除去する本法は,出血リスクは小さいものの吸引のみで完全再開通が得られる症例は少ないという。氏は,再開通率を向上させるための工夫として,より早期の治療開始を可能にする医療システムの構築やウロキナーゼ動注などの他の手法との併用が有効と紹介した。
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